東方帝国はずっと森田グループのライバルであり、グループ内部ではとっくに東方帝国のチームメンバーを把握していた。
武田直樹は彼らの一人一人の実力まで知り尽くしていた。
彼のチームが第10のセキュリティホールを見つけられなかったのなら、今井修平のチームも見つけられるはずがない。結局、両者の実力は互角で、どちらも明らかな優位性はなかったからだ。
むしろ森田グループには直樹がいるため、より優位なはずだった。
しかし、今回のプロジェクトで直樹は手を出すつもりはなかった。
彼は社長として、グループ全体の運営に責任を持つ立場であり、毎日チームについてセキュリティホールを探して塞ぐことはできない。それはエンジニアの仕事だった。
東方帝国チームの中で、唯一の変数となるのは美智だった。
しかし彼女は他のエンジニアとは全く異なるタイプで、むしろ大野秘書と同じような雰囲気を持ち、全く緊張している様子もなく、プレッシャーも感じていないようだった。
セキュリティホールを修正するのは、見つけるよりもはるかに難しい。丸一時間以上が経過して、ようやくスヤ社長が結果を発表した。
一位は依然として東方帝国で、所要時間は35分。
二位は森田グループで、所要時間は50分。
その後の他国のチームはさらに時間がかかり、中には第10のセキュリティホールを修正できずに諦めたチームもあった。
東方帝国は圧倒的な一位で、他のすべてのチームを完全に上回っていた。
直樹は思わず眉をひそめた。
これはありえない!
今井修平が率いるチームの実力は彼がよく知っているはずだ。こんなに大差で勝つことなどできるはずがない!
彼は自分のチームに問題があったのではないかと疑った。「どうなっているんだ?なぜこんなに時間がかかったんだ?」
プロジェクト副社長が急いで答えた。「武田社長、他の9つのセキュリティホールは30分以内に修正できました。第10のホールで時間を取られたんです。」
直樹は理解した。彼らはやはり第10のセキュリティホールで負けたのだ。
もし今井修平のチームが第10のセキュリティホールを事前に修正していなかったなら、勝者は森田グループだったはずだ。
直樹の視線は東方帝国のチームを一瞥し、最後に今井修平に落ち着いた。