第201章 祖母の医館が壊される

「無理よ、深志はプライドが高すぎるから、自分の傷を人に見せるなんてできないし、人の施しなんて絶対に受け入れないわ」

武田香織は首を振った。「もう、美智姉さん、気にしないで。私にとって百万円なんて大したことないし、それに貸すだけで、あげるわけじゃないわ。彼はきっといつか返してくれるわ」

美智は思わずため息をついた。「あなたが彼のことを好きで、助けたいのはわかるけど、オークションハウスは最近あまり儲かってないでしょう。前回のチャリティーオークションでもかなりの赤字を出したわ。どこから百万円も出すつもり?」

香織は最近本当に資金繰りが厳しかった。彼女の資金はすべて会社に投資してしまい、緊急用に少し残しておいたお金も、前回深志に八十万円貸してしまったため、今は財布がすっからかんだった。

彼女は自分の車を見た。「車を売ればいいんじゃない?」

「絶対ダメよ。あなたはオークションハウスのオーナーなのよ。オーナーが車を売ったら、他の人はどう思うかしら?会社が破産寸前だと思われて、誰もオークションに来なくなるわよ」

「そうね、確かに。車は売れないわ。じゃあ、家を売ろうかしら?」

「そんなことできるわけないでしょう。あの別荘はお父さんがあなたの持参金として贈ったものでしょう?それに、あんな大きな別荘はすぐに売れるものじゃないわ」

香織は困り果てた。「じゃあ、他に何を売ればいいの?またお父さんにお金を頼むわけにもいかないし、お父さんが私が深志にお金を貸したって知ったら、また怒るわよ」

「お父さんは深志のことを知ってるの?」

「知ってるわよ。お父さんは私と深志が一緒になることに反対で、わざわざ人を使って深志に警告したのよ。深志はそれで怖くなって、しばらく私に会いに来なかったわ。お父さんが海外に出張してからやっと会いに来てくれたの」

美智は驚いた。「お父さんも深志のことを良く思ってないのね。だったら、お金を貸すのはやめた方がいいわ。私も不安だわ」

香織は寂しそうな顔をした。「お兄ちゃんがまだ生きていたらよかったのに。きっとお金をくれたし、私と深志のことも応援してくれたはず。美智姉さん、あなたは私を応援すべきよ。深志は本当にいい人だから、助ける価値があるわ。こんなこと、直樹兄さんには相談できないわ。絶対に怒られるから」