美智は声を震わせた。「おばあちゃんはどこを怪我したの?」
「頭だ」
美智は思わず目を閉じた。
頭は人体で最も脆弱で致命的な部位だ。おばあちゃんは年を取っている、頭部の怪我なんて耐えられるはずがない。
「たぶん一時的な気絶だよ。お前は鍼灸ができるだろう?おばあさんに治療してやれば、きっと目を覚ますはずだ。他の場所には特に怪我はないからな」
この言葉に、美智は大いに慰められた。
彼女の恐怖感はようやく和らいだ。
彼女は武田直樹の腕から抜け出そうとしたが、彼は彼女の背中を押さえて離さなかった。「君の体、冷たいよ」
怖くて、と美智は心の中で思った。
彼女の体はまだ震えていたが、さっきよりはましになっていた。
彼女は冷たい手で彼の手を取り除き、距離を置いた。「おばあさまに電話してもらえる?おばあさまと話したいの」
直樹は武田奥さんに電話をかけた。
「奈々子、おばあちゃんよ」
美智は彼女の声を聞いて、すぐに鼻が詰まる感じがした。
彼女は武田奥さんと簡単に話し、無事だと知って少し安心した。
武田奥さんは軽傷を負っただけで、ボディーガードが暴れていた患者のほとんどを阻止していた。
武田朝雄は本当に先見の明がある人だった。前もってボディーガードを手配していなければ、今回の結果は想像を絶するものになっていただろう。
2時間の道のりを、運転手は1時間ちょっとで到着させた。
今日、直樹に付き添って運転していたのは、彼のボディーガードの朝倉翔だった。彼の運転は徹よりもずっと荒々しかった。
美智は車から降りると、めちゃくちゃに壊された医館に駆け込み、ベッドに横たわるおばあちゃんを見た。顔色は青白く、彼女の涙はすぐに溢れ出した。
彼女は泣きながら、おばあちゃんの脈を診た。
しばらくして、彼女の顔色も青ざめてきた。
おばあちゃんの脈があまりにも弱かった!
彼女の頭は間違いなく強打を受けていた。彼女を殴った患者は、彼女を生かす気などさらさらなかったのだ!
武田奥さんは彼女の顔が青ざめるのを見て、急いで尋ねた。「奈々子、おばあさんの怪我はとても深刻なの?他に怪我もないし、出血もしていないから、すぐに目を覚ますと思ったんだけど」