「わからないけど、試してみるわ」
美智は涙を拭うと、振り返って外に向かった。
陸直樹は急いで追いかけた。「どこに行くの?」
「医館に戻るわ。お婆ちゃんの何年分もの診療記録が全部医館にあるの。難しい症例は全て詳細に記録してあるから、きっとあの時お婆ちゃんが治した人の症例が見つかるはず!それさえ見つければ、お婆ちゃんを救えるわ!」
「送っていくよ」
美智は断らなかった。今は彼に遠慮している場合ではなかった。
葉山紗里は従妹が直樹について行くのを見て、少し驚いた。
直樹は従妹に対して本当に効果があるんだ!
奈々子は確かに彼のことが好きなんだ。彼が現れただけで、あんな魂が抜けたような状態から彼女を引き戻したんだから。
従妹はおばあちゃんにまだ救いがあると言ったの?
紗里の心に一筋の希望が灯った。彼女は病室に駆け戻り、泣きながらおばあちゃんの手を握った。「おばあちゃん、もう少し頑張って。奈々子があなたを救う方法を考えてるわ!あの子はとても賢いから、きっとできるわ!」
小さな町への帰り道、美智は無理やり少し食べ物を口にした。
体力が必要だった。彼女は倒れるわけにはいかなかった。そうでなければ、お婆ちゃんを救える人は誰もいなくなってしまう。
医館に着くと、彼女はすぐにお婆ちゃんの診療記録に没頭した。
直樹も一緒に探してくれた。
1時間ほど経って、彼は一冊のカルテを彼女に渡した。「これかな?」
美智はそれを受け取って目を通すと、急に元気づいた。「これよ!」
カルテの患者は、誰かと喧嘩をして後頭部を殴られ、昏睡状態に陥った人だった。
この人が病院に運ばれた時、病院ではもう受け入れを拒否し、葬式の準備をするよう言われていた。
家族はあきらめきれず、町に名医がいると聞いて、わずかな望みを抱いて治療を受けに来たのだった。
お婆ちゃんも最初はすぐに患者を目覚めさせることができなかったが、豊富な医療経験を持っていたため、すぐに治療法を調整した。2回の鍼治療の後、患者は意識を取り戻し、1ヶ月後には完全に回復した。
この出来事は当時小さな話題を呼び、患者と家族は感謝の盾を持ってきたこともあった。
だから美智の印象に強く残っていた。