第206章 あなたには方法がありますか?

「知らないの?」

葉山紗里は悲しみを隠せなかった。「私の叔母さんも患者に刺されて亡くなったの。当時、叔母さんは患者の治療をしていたんだけど、その患者が何かの理由で突然ナイフを取り出して、叔母さんを刺したの。その時、私と奈々子は鬼ごっこをしていて、彼女はタンスの中に隠れていて、その光景を見てしまったの」

「彼女はその時まだ7歳だったわ。お母さんが傷ついているのを見て、すぐにタンスから飛び出して、お母さんを助けようとしたの」

「でも、その患者は奈々子を見つけると、今度は彼女を刺そうとした。叔母さんは奈々子を守るために、その患者にしがみついたの」

「叔母さんは奈々子に逃げるように言ったけど、自分は患者に何度も刺されて、亡くなってしまった」

陸直樹の胸が突然痛んだ。

そうか、彼女の母親はこうして亡くなったのか。

そうか、彼女の幼少期はこんなに不幸だったのか。

「その患者はその後警察に捕まったけど、奈々子はあの時から血を見るのがとても怖くなったの。少し物心がついた頃には、絶対に他人の病気は治療しないと誓ったわ」

「おばあちゃんも大変な努力をして、やっと奈々子の血を見ることができない癖を治したの。奈々子は実はとても勇敢なの。叔母さんが事件に遭った時、私もその場にいて、血まみれになった姿を見たけど、私は今でも血を見ることができないのに、奈々子はおばあちゃんについて醫術を学び、様々な小動物の骨を接合したり、傷を縫ったりできるようになったわ」

これらを話し終えると、紗里は深く息を吸った。「あなたにこれらを話したのは、特に意図があるわけじゃないの。ただ、これからは奈々子に優しくしてほしいだけ。彼女は本当に大変な思いをしてきたから」

直樹は返事をした。「わかりました」

「彼女は今、食事も取らないし、状態もおかしいの。中に入って説得してくれない?おばあちゃんはもうこんな状態だし、奈々子が...このショックに耐えられなくて何かしてしまわないか心配なの」

直樹はうなずき、病室に入った。

紗里は彼の背中が見えなくなると、頭を垂れた。

おばあちゃんはもうダメだ。これ以上いとこを失うわけにはいかない。彼女ははっきりと覚えている、いとこは陸直樹のことがとても好きだった。直樹が奈々子を少しでも正気に戻してくれることを願うばかりだ。

病室内。