おそらく彼女の態度が十分に断固として冷淡だったため、橋本海東もそれ以上しつこく食い下がることはなく、少し騒いだ後で立ち去った。
美智はすぐに朝食を作り終え、祖母の寝室を覗くと、彼女はすでに目を覚ましていた。
「奈々子、さっき外で誰かが騒いでいるのが聞こえたけど、何かあったの?」
「何でもないわ、ただ物売りが来ただけよ。追い返したわ」
「あなたが一人で住んでいるなら、確かに注意が必要ね。見知らぬ人にむやみに扉を開けないように」
「わかってるわ!」
美智は祖母が起き上がるのを手伝いながら、少し期待を込めて尋ねた。「歩けるか試してみませんか?」
沢田苗子はベッドから降り、二、三歩歩いてみた。「悪くないわ。ただ足がまだしびれているけど、あなたが支えてくれれば少し動き回れそうよ。こんなに長く寝ていたら、もう寝ていられないわ」
美智は笑った。「おばあちゃんは働き者すぎるのよ。じっとしていられないんだから。他の人なら毎日寝ていたいって思うのに!」
祖孫二人は少し冗談を言い合った後、洗面所へ向かった。
朝食を済ませると、美智は車で祖母を連れて外出した。
彼女は二つの店舗に目をつけており、祖母を連れて両方を見に行き、医館に適した場所を選んでもらうつもりだった。
二つの店舗を見終わる頃には、すでに昼になっていた。
祖母はすでに店舗を決めていた。彼女が選んだのは一階建てだが、面積が200平方メートル以上ある路面店だった。
美智はもともともう一つの店舗を選びたかった。なぜなら、そちらは二階建てで、患者の治療区分けに適していたからだ。
しかし祖母は一階建ての店舗に固執した。彼女は年配の患者には階段の上り下りが大変だと言い、美智もそれはもっともだと思い、一階建ての店舗を選んだ。
さらに、この店舗はもともとクリニックだったため、レイアウトが合理的で、簡単な改装だけですぐに使えるようになる。
新しい医館は祖母の以前の医館よりもかなり広く、彼女は前から医館が小さすぎて使いづらいと感じていたので、今回の広さにとても満足していた。
場所を決めた後、美智は祖母を家に連れて帰った。
彼女は武田香織に電話をかけた。
「由梨、私これから医者になるつもりなの。おばあちゃんと一緒に医館を開くから、オークションハウスを辞めなきゃならないわ」