第161章 返して

陸直樹は家に帰り、服を着替えて寝る準備をした。

服を脱ぐ動作が肩の傷を刺激し、彼はちらりと見た。

美智は本当に容赦ないな、彼を噛むのに全力を尽くしていた。見たところ、本当に彼のことが嫌で仕方ないようだ。

彼女にこんなに噛まれては、確実に傷跡が残るだろう。美智のおばあさんの薬でもない限り。

残念ながら、彼女はケチで彼に分けてくれない。

でも、あの小島警官のところには一本あるようだ。

彼は携帯を取り出し、アシスタントにメッセージを送った。アシスタントは明日休みだが、ちょっとした用事を頼むくらい問題ないだろう?

メッセージを送り終えると、彼はベッドに入って眠った。

翌朝、直樹は眉間にしわを寄せて目を開けた。

彼はまだ美智が殺される悪夢を見ていた。

彼は何度も何度も、際限なく彼女が殺される場面を夢に見ていた。

彼女が一度殺されるたびに、彼の心臓は一度鼓動を乱した。

彼はもう心臓病になりそうだった。

なぜこうなるのだろう?

これは彼が先に美智を救わなかったことへの罰なのだろうか?

彼は首を振り、起き上がって洗面所へ向かった。

突然携帯が鳴り、手に取って見ると、なんと美智からの電話だった。

珍しい、彼女から進んで電話をかけてくるなんて?

彼は応答ボタンを押すと、携帯から彼女の澄んだ声が聞こえてきた。「陸直樹、昨夜私の家に来た時、何か持っていかなかった?」

直樹はすぐに自分が持ち帰った薬用石鹸を思い出した。取り出して見ながら言った。「いいや」

「昨夜私に何て言ったの?」

「何が?」

「あなたも私の嘘をつく価値があるって」

「そう言ったけど、それがどうした?」

「今まさに嘘をついてるじゃない!私の薬用石鹸を持っていったでしょ、返して!」

直樹は彼女がどうやって一つの石鹸がなくなったことに気づいたのか不思議に思った。結局彼女はたくさん持っているし、彼はただ一つ持っていっただけなのに、彼女はすぐに気づいたのだ。

同時に、彼はまた腹立たしくもあった。彼女は武田香織に六つ、小島警官に四つも気前よく渡したのに、彼が一つ持っていっただけで、電話をかけてきて返せと言うなんて!

しかし、もう見破られたからには、隠す必要もない。「確かに持っていったよ。たかが一つの石鹸のために朝早くから取り返しに来るなんて、美智、そんなにケチるなよ」