第170章 美智に価値はない

美智は大野秘書と一緒に、左右から今井修平の後ろに付き従い、アシスタントの役割を完璧に演じていた。

外では他のメンバーもすでに待っていた。一行はホテルを出て、スヤが提供した専用車に乗り込み、会場へと向かった。

車内で今井修平は冗談を言うのを忘れなかった。「シアカーのシステム障害はまだ解決していないのに、この車に乗っていると、天国が少し近く感じるのはどういうことだろう?」

美智は微笑んだが、何も言わなかった。

彼女には修平のような余裕はなかった。これが初めて上司について出張し、プロジェクトを獲得するための機会だった。緊張していないと言えば嘘になる。

しかも、相手は森田グループだ。

公私ともに、彼女は勝つしかなく、負けるわけにはいかなかった。

十数分後、彼らは会場に到着した。

彼らは比較的遅く到着した方で、入場した時には会場はすでにほぼ満席だった。

しかし修平は慌てる様子もなく、東方帝国の席に腰を下ろした。

東方帝国の隣のエリアは、森田グループの区域だった。

森田グループも今回は十数人で参加しており、その先頭にいたのは武田直樹だった。

修平は一席空けて彼に微笑みかけた。「武田社長、お久しぶりです」

直樹は彼を見ることなく、意外な白い姿に目を向けていた。

美智?

彼女がなぜここに?

彼が応答しなくても、修平は怒る様子もなく、笑いながら言った。「どうしました?武田社長は私の新しいアシスタントに興味があるようですね?ああ、そういえば、彼女が以前我々のグループに面接に来た時、あなたは会ったことがありましたね」

直樹はようやく視線を戻し、冷たく修平を見た。「彼女が何者か、あなたは分かっているはずだ。私と彼女の関係を知らないふりをする必要はない。なぜ彼女を連れてきた?」

「彼女は私のアシスタントで、とても美しい。気に入っているんだ。彼女を連れてこないで誰を連れてくるんだ?どうせ我々のグループはあなたたちに勝てないんだから、旅行気分で来たんだよ。美女を伴えば、旅も退屈じゃないだろう!」

「勝てないと分かっているならいい」

直樹は冷淡な口調で言った。「もし彼女を利用して私や森田グループに何かしようと考えているなら、結果は失望するだけだ。彼女は私やグループについて何も知らない。彼女に価値はない」

修平は思わず笑い出した。

美智に価値がない?