美智は大野秘書と一緒に、左右から今井修平の後ろに付き従い、アシスタントの役割を完璧に演じていた。
外では他のメンバーもすでに待っていた。一行はホテルを出て、スヤが提供した専用車に乗り込み、会場へと向かった。
車内で今井修平は冗談を言うのを忘れなかった。「シアカーのシステム障害はまだ解決していないのに、この車に乗っていると、天国が少し近く感じるのはどういうことだろう?」
美智は微笑んだが、何も言わなかった。
彼女には修平のような余裕はなかった。これが初めて上司について出張し、プロジェクトを獲得するための機会だった。緊張していないと言えば嘘になる。
しかも、相手は森田グループだ。
公私ともに、彼女は勝つしかなく、負けるわけにはいかなかった。
十数分後、彼らは会場に到着した。
彼らは比較的遅く到着した方で、入場した時には会場はすでにほぼ満席だった。
しかし修平は慌てる様子もなく、東方帝国の席に腰を下ろした。
東方帝国の隣のエリアは、森田グループの区域だった。
森田グループも今回は十数人で参加しており、その先頭にいたのは武田直樹だった。
修平は一席空けて彼に微笑みかけた。「武田社長、お久しぶりです」
直樹は彼を見ることなく、意外な白い姿に目を向けていた。
美智?
彼女がなぜここに?
彼が応答しなくても、修平は怒る様子もなく、笑いながら言った。「どうしました?武田社長は私の新しいアシスタントに興味があるようですね?ああ、そういえば、彼女が以前我々のグループに面接に来た時、あなたは会ったことがありましたね」
直樹はようやく視線を戻し、冷たく修平を見た。「彼女が何者か、あなたは分かっているはずだ。私と彼女の関係を知らないふりをする必要はない。なぜ彼女を連れてきた?」
「彼女は私のアシスタントで、とても美しい。気に入っているんだ。彼女を連れてこないで誰を連れてくるんだ?どうせ我々のグループはあなたたちに勝てないんだから、旅行気分で来たんだよ。美女を伴えば、旅も退屈じゃないだろう!」
「勝てないと分かっているならいい」
直樹は冷淡な口調で言った。「もし彼女を利用して私や森田グループに何かしようと考えているなら、結果は失望するだけだ。彼女は私やグループについて何も知らない。彼女に価値はない」
修平は思わず笑い出した。
美智に価値がない?