第140章 何か遺言はある?

美智が再び目を覚ました時、二人の誘拐犯が口論しているのが聞こえた。

「あの女を殺せって言ったのに、お前が生かしておけって。これだよ、彼女を連れてくるのに気を取られて、金を一袋も少なく取ってきちまった!」

「二袋でも六千万以上あるだろ、俺たちが使うには十分だ。なんでそんなに人殺しにこだわるんだ!この女は無実だぞ!」

「金持ちに無実な奴なんていねえよ!全員死ぬべきだ!あいつらはあんなに金持ってるのに、俺たちみたいな貧乏人を助けようともしない!俺が工事現場で必死に働いて、たった二万円しか稼げないんだぞ、病院代にも足りやしない!杉村社長はまだ俺の給料一万円も払ってねえ、あいつらは人間じゃねえ!」

「お前はもう給料を払わなかった杉村社長を殺したじゃないか、それで十分だろ!もう人殺しはやめろよ!」

「殺すなら、あの陸って奴も一緒に殺してやりたいね!あの杉村社長は、あいつらグループの配下だったんだ、あいつらに良い奴なんて一人もいない!俺はどうせもう長くねえんだ、死ぬ前に金持ちを何人か道連れにしてやれば、この人生も無駄じゃなかったってもんだ!」

美智はここまで聞いて、心が底まで沈んでしまった。

なんと、この誘拐犯はすでに人を殺していたのだ!

怖くないなんて、嘘に決まっている。

こんな凶悪な人間を前にして、どれだけ冷静を装っても無駄だった。

誘拐犯は彼女が目を覚ましたのを見て、ナイフを持って近づいてきた。

美智は思わず後ずさりした。

「聞いたな?俺はもう一人殺してる、お前が増えたところで変わらねえよ。安心しろ、お前は気に入った、あの蓝って女よりずっと素直だ。すぐに終わらせてやる、一撃で命を絶つ、どうだ?」

どうもこうもない!

美智は心の中で叫んだが、口から出た言葉は震えていた。「あなたは私を人質にして金を要求するんじゃなかったの?私を殺したら、お金はもらえなくなるわ」

「もういらねえよ、お前の男はルールを守らなかった。一人で身代金を持ってくるはずが、大勢連れてきやがった。俺が用心してなきゃ、死んでたところだぜ!やっぱり金持ちは腹黒いな!」

美智は急いで言った。「私もお金を出せるわ!彼を信じられないなら、私を信じて、私はルールを守るから!」