第109章 どれだけ多くの乙女心を砕いたか

小山星河は平然とした様子で、バックミラー越しに運転している利田均を一瞥した。

利田均は冷や汗をかきながら、すぐに意図を察し、ハンドルを急に切った。小山星河は勢いよく鈴木瑠璃の胸元に倒れ込んだ。

利田均は照れ笑いを浮かべた。「美人お姉さん、運転が下手でごめんね。」

鈴木瑠璃は「……」

星河は倒れ込んだ際、心を揺さぶる香水の香りを嗅ぎ、心地よい怠惰な気分に包まれた。そのまま厚かましく彼女の膝を枕にして、だらしなく動こうともしなかった。

瑠璃も弟の悪だくみを見抜いていたが、それを指摘せず、唇の端をかすかに引き上げた。

彼女は今日シャネルの5番を纏っていた。イランイラン、オレンジブロッサム、五月のバラ、ジャスミンが混ざり合い、初めて会った時の胸の高鳴りのような香りは、女性の魅力と色気を最も引き立てるものだった。

男を誘惑するにも、ちょっとした駆け引きが必要なのだ。

前方で偶然バックミラーを覗き込んだ利田均は、目玉が飛び出るほど驚いた。

くそっ、あの厚かましく女の子の膝の上に横たわっている奴が河さん?

これが学校の女子たちに知れたら、どれだけの乙女心が砕けることか!

しかし……均はこっそりもう一度覗き込んだ。中央の美人お姉さんは無関心そうに目を伏せ、いたずらっぽく指で弟の髪を弄び、隣では人々を魅了する美男子が彼女の肩に寄り添い、長いまつげが羽のように閉じられ、その雰囲気は怠惰でありながらも超然としていた。

正直言って、彼は男でありながらも少し羨ましく思った!

陸田家に着くと、瑠璃はしびれた足と肩を少し動かした。「起きなさい。」

この二人はいつまで彼女を人間クッションとして使うつもりだろうか?

星河は怠そうに起き上がり、外の城のように壮大で美しい山水の邸宅を見たが、車から降りる気配はなかった。

「瑠璃、彼は本当に酔ってないよ。ただの演技だ。」

瑠璃は呆れた目で彼を睨んだ。「よく言うわね。」

あの子供たちが陸田子墨にあれだけの酒を飲ませたのを目の当たりにしたのだ。どんなに酒に強い人でも酔っぱらうはずだ。ましてやアルコール度数があんなに高かったのだから。

陸田家の若い女中が遠くから走ってきて一目見ると、「二少爺様!二少爺様がこんなに酔っぱらってるなんて!」

子墨の隣にいる瑠璃を見て、若い女中は一瞬戸惑った。「大少奥様……」