二十代前半で既にピラミッドの頂点に立った木村佑は、世間が見るような正人君子で温和で謙虚な姿とは程遠かった。
ごく一部の人だけが知っていることだが、佑の冷たく距離を置いた外見の下には、火山のように熱い勝負欲と巨大な野心が潜んでおり、目的のためには手段を選ばなかった。
木村勝を引き継いでからわずか三年で、各業界のエンターテイメントチェーンを独占し、代替不可能なエンターテイメント帝国を一手に築き上げ、多くの大企業を業態転換や倒産に追い込み、悲惨な状況を作り出した。
佑はグラスを持ち、静かにそこに立っていた。目には一筋の光もなかった。
心の片隅が少しずつ崩れ落ち、風が吹き抜け、終わりのない深淵の死の静けさに沈んでいた……
「インテリ系の悪党が一番女の子に人気なんですよ?」鈴木瑠璃は甘く笑った。「肌の飢餓症候群だってどうってことないじゃないですか、可愛いですよ」
佑の表情が凍りついた。長いまつげが震え、目の奥に温かい光が走ったかのように、信じられないという様子で隣の女性を見つめた。
陸田謹言は内心で苛立ちを覚え、何か言おうとした瞬間、突然辺りが真っ暗になった。
「きゃあ!」数人の女性が驚いて叫び、大広間は騒然となった。
一瞬前まで昼間のように明るかったのに、人々は突然の暗闇に適応できず、目を閉じても開いても全く違いがなく、何も見えなかった。
誰かが小声で話し合っていた。「停電したのかな?」
佑の最初の反応は隣にいる瑠璃を安心させることだった。低い声で言った。「怖がらなくていい」
瑠璃が「うん」と答えた瞬間、黒い手が背後から音もなく現れ、彼女の口と鼻を強く押さえ、素早く後ろに引きずっていった。
黒い影の気配は非常に見知らぬもので、殺意を含んだ冷たさを漂わせていた。彼女がこれまで接したことのないものだった。
瑠璃は不意を突かれて数メートル引きずられたが、素早く反応し、肘で背後の人間の最も弱い腹部を強く打った。
背後にいたのは男だったようで、異常なほどの力の持ち主だった。瑠璃の一撃を受けて闇の中でうめき声を上げ、ほとんど地面に膝をついてしまいそうになり、彼女の口と鼻を押さえていた手も少し緩んだ。
瑠璃はその隙に叫んだ。「木村ー!」
その手が再び覆いかぶさり、刺激的な薬の匂いがした。