第95章 俺木村佑の女

周防美月は湯気の立つお茶を持ちながら、目をハートマークのように輝かせていた。「あれは陸田子墨よ!木村社長と同じくらいイケメンで、同じくらいお金持ち!前に友達と、あんな高慢で気難しい人はどんな女性が好みなんだろうって話してたのに、他の臭い男と同じで、派手な美人が好きなんだなんて……」

鈴木瑠璃は少し呆れた。この酸っぱい口調は、もう少しで彼女を妖艶な狐狸精と直接言いかねないところだった。

背後から突然、冷たさを帯びた声が聞こえた——

「派手な美人でも、平凡よりはマシだ」

この低く磁性のある声は、広大な木村勝で知らない者はいなかった。周防は急いで頭を下げて直立した。「き……木村社長!」

瑠璃は驚いて、突然給湯室に現れた男性を見た。

白いシャツにスーツのズボン、さわやかでスタイリッシュな髪型、深みのある立体的なハーフの顔立ちは青白く若々しく、エンターテイメント業界の18歳のイケメン俳優にも引けを取らなかった。

「勤務時間中に、噂話を聞きに来たのか?」木村佑は冷たく問いただした。

周防は小さな声で「すみません」と言い、氷山のような上司に叱られるのを恐れ、急いで自分の席に戻った。

噂話をしているところを見つかり、瑠璃もそっと逃げ出そうと思ったが、目の前の背の高い男性が彼女をじっと見つめ、薄い唇が人を惑わすような笑みを浮かべた。「仕事終わりに一緒に食事でもどうだ?」

誘いの言葉ではあったが、断れないような口調だった。

今朝、佑が大きな助けになってくれたことを考えると、断るのは少し気が引けた。そこで彼女は答えた。「いいですよ!」

食事の場所は前回と同じく、西洋料理店や格式高いレストランだと思っていたが、予想外にも佑は彼女を騒がしい「大保健」という店に連れて行った。

えっと……大保健って何だろう……

一様に男性客ばかりの店内を見て、瑠璃は目を丸くし、小声で注意した。「木村社長、本当にここでいいんですか?」

「ああ」

佑は平然とした表情で、落ち着いた気品ある態度を崩さなかった。高価なオーダーメイドのスーツはシワひとつなく、30代から40代のハゲかけた男性たちの中に立つと、まさに「泥中の蓮」という言葉がぴったりで、清潔で上品な雰囲気が光を放っているようだった!