鈴木瑠璃は顔を上げて目の前の少年を見つめ、一瞬ぼうっとした。
頭上の眩しい照明が彼の姿を照らし、少し目に刺さるようだった。
小山星河はまっすぐに立ち、彼女の肩に置いていた手が自然に下へと滑った。
指を動かし、器用に彼女のスーツのポケットからタバコの箱を抜き取った。
「これからは吸うな」少年はタバコの箱を振りながら、冷ややかな目つきで言った。「どこでこんな悪い癖を覚えた?」
なぜか、星河の輝くような目を見つめると、瑠璃の心には少しずつ後ろめたさが湧いてきた……
「私、吸ってないよ」瑠璃はまばたきした。
突然、目の前に影が落ち、少年が予告もなく身を乗り出してきた。鼻先がほとんど彼女とくっつきそうになり、語尾は甘い誘惑のように低く囁いた。「吸ったかどうか、キスして確かめようか?ん?」
瑠璃は反射的に周りを見回した。
隅っこで白石塵という青年が見え透いた様子で目を手で覆っている以外は、誰もこちらに注目していなかった。
彼女が気を取られていたその2秒の間に、少年は彼女の後頭部に手を添え、自分の胸元へと引き寄せた。
清々しい香りが突然鼻孔に入り込み、二人の唇はA4用紙2枚分の距離しか離れていなかった……
クズ女の瑠璃が弟分の初キスを奪おうとしたその瞬間、星河は動きを止めた。
細長い指が彼女の鎖骨辺りの髪をかき分け、首筋に貼られた二つの絆創膏を見つけた。
「ここ、どうしたんだ?」
瑠璃の脳裏には一瞬、子墨と木村がやらかした仕業が浮かび、目を少し見開いた。若い狼犬がさらに大きな痕をつけるのを恐れ、慌てて自分の首を手で押さえた。
「何でも…ちょっと切っちゃっただけ!」
彼女のあまりにも不自然な行動は星河の目に留まり、どこもかしこも後ろめたさと奇妙さが透けて見えた。
少年は指を彼女の髪に差し入れ、毛先に沿って優しく梳きながら、彼女の目をじっと見つめた。「じゃあなんで緊張してるの?もしかして…悪いことした?」
瑠璃は無邪気に彼と視線を合わせた。「してないよ」
幸い彼女は前もって絆創膏を貼っておいたので、ここの痕跡は隠れていた。
そうでなければ、血気盛んな弟分に見られたら、ふふ……
星河はその二つの絆創膏をじっと見つめ、透き通るような黒い瞳に一筋の疑いが過った。そして、意味深な視線を彼女の顔に落とした。