第19章 彼女を窮地から救う

そうなれば永川安瑠は「泥棒」というレッテルを貼られ、それは二度と剥がれることはないだろう。それは彼女の一生の汚点となるはずだ！

そして彼女の夢は、絶対にこの汚点の存在を許さない！

覚悟を決めて、安瑠はこの人たちの束縛から逃れることを決意した。とにかく、死んでも身体検査だけは受けられない！

彼女がそう思った瞬間、安瑠は突然、痛いほど強く掴まれていた肩の力が緩んだことを感じた。

安瑠が驚いていると、微かに冷たい香りが彼女の側から漂ってきた。振り向くと、いつの間にか武内衍が彼女の隣に立っていた。

彼の表情はいつものように冷淡で、深い冬の池のような黒い瞳は底が見えず、その目の前に掛かる霧の層を見通すことができなかった。薄い唇はきつく結ばれ、微かな不快感を漂わせていた。

彼はポケットに両手を入れ、一見くつろいだ様子で、優雅で気品があり、全身から上位者の逆らえない雰囲気を発していた。独裁的でありながらも、思わず心服してしまうような存在感だった。

安瑠の落ち着かない心臓は、衍を見た瞬間に静まり、まるで濃厚な安心感に包まれたかのように、目に感動の色が浮かんだ。

彼がいる場所では、彼女はいつも安心を感じる。昔と同じように。

そして衍の出現を見た名門のお嬢様たちは、次々と顔を赤らめ、心臓を高鳴らせながら、さりげなく自分の服装や化粧を整え、衍に気に入られることを願った。

「武内さん、お邪魔して申し訳ありません。ほんの小さな問題ですので、すぐに処理できます。お気分を害することはありませんよ！」先ほどまで安瑠の前で威張り散らしていた責任者は、衍を見た瞬間にしおれ、媚びるような笑顔で衍に話しかけた。その犬のような態度に安瑠は思わず目を白黒させた。

やはり皆、お金に目がない勢利鬼だ。

「君たちは既に私の気分を害している」衍はまぶたを少し持ち上げ、冷たい目で責任者を見つめた。彼の声は非常に美しく、清冽で魅惑的で、人の心を惑わせるような響きを持っていた。

安瑠の小さな心臓は思わず速く鼓動し始めた。特に今、彼との距離がこんなに近いことで、頬に赤みが浮かんでしまう。

責任者は慌てて謝罪し、まるで塵の中に沈むかのように卑屈な様子で「申し訳ありません、申し訳ありません、これは私たちの過ちです。どうか武内さんには大きな心で私たちの過ちをお許しいただきたく...」