第34章 拒絶

「はい、あなたのデザインは素晴らしいです」永川安瑠の目に賞賛の色が浮かんだ。翡翠の首席デザイナーは、確かに見せかけだけではなく、本物の才能と技術を持っていた。

谷川謙も非常に満足していた。今や彼は永川安瑠をどう見ても満足せずにはいられなかった。見れば見るほど、このような人材がただのデザイナーアシスタントに甘んじているのは、あまりにも非人道的だと感じた。

「君は才能がある。社長が出張から戻ったら、君を翡翠の新しいデザイナーに昇進させるよう提案するつもりだ」谷川は安瑠を賞賛の目で見つめ、まるで宝物を発掘したかのようだった。

デザイナー?

安瑠の心に痛みが走ったが、表情には出さず、丁寧に谷川の提案を断った。「私の頭の中にはこのような非現実的なアイデアしかないんです。そんなに褒めていただいて、本当に恐縮です」

「そんなことはない。謙遜しないでくれ。君ならきっとできると信じているよ」谷川は信じず、彼女の謙遜をただ好ましく思うだけで、説得する考えを諦めなかった。

安瑠は唇を噛み、突然頭痛を感じた。「ご存知ないかもしれませんが、私の手は以前事故に遭って、まだ回復中なんです。デザイン画を描くときは力加減が重要で、そうでないとデザイン画は美しさに欠けてしまいます。私の手の状態では、それができないんです」

「それは問題ない。まずは少しの間やってみて、手はいずれ良くなるだろう」谷川もデザイナーにとって手がどれほど重要かを理解していたが、まだ諦めず、彼女を説得し続けた。

この谷川さんは本当に手強いな…

「谷川さん、やはりアシスタントの仕事の方が私に向いていると思います。私にその能力があると考えられるようになったとき、改めてお返事します。いかがでしょうか?」仕方なく、安瑠は妥協案を選んで谷川にこの考えを諦めさせようとした。

おそらく彼は一時的に彼女がデザイン画の問題を見抜いたことに驚いただけで、しばらくすれば忘れてしまうだろう。

谷川は少し考え、安瑠があまり乗り気でないことを察したようで、それ以上彼女を追い詰めなかった。「わかった。考えがまとまったら、いつでも来てくれ」

安瑠はうなずき、目を細めて笑いながら感謝した。「ご評価いただきありがとうございます。頑張ります」