第33章 夢であり、悪夢でもある

ニロは唇を強く噛みしめ、永川安瑠が去っていく背中を見つめながら、瞳に嫉妬と恨みの色が過ぎった。

部長はため息をつくと、手を叩いて会議室にいた人たちを各自の持ち場に戻らせてから、ニロの前に歩み寄って言った。「今回の件は確かにあなたの態度に問題があったわ。何事も行動する前に、その是非をよく考えるべきよ。人を見た目で判断してはいけない。こういった過ちは二度と繰り返さないでほしいわ」

「……はい、わかりました。次からは気をつけます」ニロは小さな声で答え、うつむいたまま、目に宿る嫉妬と不満の色はますます濃くなっていった。

部長は満足げに頷くと、会議室を後にした。

この永川安瑠、予想外だったわ。コーエンノール出身の新星だと思っていたけれど、まさか、こんなに輝かしい星だったとは。

チーフデザイナーのオフィスでは、安瑠が広々としたデスクの前に立ち、その謙虚ながらも堂々とした態度に、見る者は思わず感心せずにはいられなかった。

谷川謙は提出されたデザイン画の下書きを取り出し、安瑠の前に差し出すと、意外にも彼女に尋ねた。「見てくれないか。もしこれを修正するとしたら、デザインコンセプトや全体の美しさを損なわずにどうすればいいと思う？」

安瑠は一瞬驚いた。彼はデザイン画の修正方法を彼女に尋ねているのだろうか？

「谷川さん、それはあなたが一番よくご存じのはずです。それに私はただの小さなアシスタントですし……」

安瑠は目立ちたくなかった。最初にアシスタントになると決めたとき、目立たないようにするつもりで入社したのだ。

しかし、思いがけずニロに一言注意しただけで、こんな状況になってしまうとは。

「私の人を見る目は絶対に間違わない！」謙は彼女が謙遜していると思い、すぐに言った。「君が問題点を見抜けたなら、必ず修正方法も持っているはずだ。謙遜する必要はないよ！」

「……」安瑠は確かにすでに修正方法を思いついていた。彼女は謙の断固とした鋭い視線を見て、軽くため息をつくと、脇にある鉛筆を手に取ることなく、デザイン画を指さしながらゆっくりと説明し始めた。

「このリングの台座はこのようにデザインできます。ここに同じ色の透かし彫りの模様を一本加え、余分な部分をここまで延長すれば、ダイヤモンドをしっかり固定しつつ、あなたのデザインコンセプトを損なうこともありません……」