第37章 十二おじさん

しかし橋本南のこの苦しそうな様子を見て、森秋陽は不思議に思った。彼はなぜこんな苦しそうな顔をしているのだろう?

だが森秋陽がその言葉を言い終えるや否や、鋭い視線が真っ直ぐ自分に向けられるのを感じ、まだ飲み込んでいなかった食べ物が喉に詰まってしまった。

「わ、私は安瑠のことを言ってるんだ、安瑠…」秋陽は慌てて言い直し、武内衍の危険な表情を見ながら説明した。

心の中で衍の変態ぶりを密かに呪った。彼は幼い頃から衍と南と一緒に育ち、衍の過去については誰よりも詳しかった。

通常、永川安瑠の親族や友人は彼女のことを「安瑠」と呼ぶが、永川安瑠の亡くなった母親と衍だけが彼女を「安安」と呼んでいた。

このあだ名は安瑠が小さい頃、衍が付けたものだった。さらに面白いことに、安瑠が話せるようになったばかりの頃、彼女は衍のことを「十二おじさん」と呼んでいた。

衍が家族の中で12番目だったからで、彼らが小さい頃はよく彼のことを「十二」と呼んでいたが、後に彼によって強制的に修正された。

その後、命知らずで衍を「十二おじさん」と呼ぶ勇気があるのは安瑠だけになった。

衍は満足げに視線を戻し、すぐに淡々と南を見た。その意味は明白だった。「彼女が君に電話をかけてきたのか?」

ボスはもう知っているのに……

南は苦い顔をしていた。やはり彼に難癖をつけるつもりなのか?

「安瑠は僕に頼みごとをしてきたんだ。永川安暁が今世紀のどこにいるか調べてほしいと言うから、教えてあげたんだ。それから……」

「それから?」衍は眉を上げ、半ば細めた瞳に人を威圧するような光が浮かんだ。

「彼女はあなたに知られないようにしてほしいとも頼んできた」南がこの言葉を言い終えた時、事態が良くないことを悟った。なぜなら彼の向かいに座っている男は、全身から発する涼しげな雰囲気が次第に冷たくなり、人を圧迫し脅かすような感じになっていたからだ。

しかし彼はただそのように慵懶で無造作に静かに座り、何も言わなかった。頭上のクリスタルシャンデリアの柔らかな光が彼の上に落ち、静かで淡く涼しげだったが、その一見無関心な態度の裏には、人が無視できない危険な気配があった。

その清らかで玉のような顔には、喜怒の色は一切見えなかった。

南と秋陽は心の中で思わず「ドキッ」として、突然とても悪い予感がして、揃って衍を見た。