お前の良き兄弟を使い終わったら、こうして放り出すのか。それでいいのか?
橋本南は黙って身を翻し、書斎を後にした。
武内衍はそのメールを開き、注意深く一読してから返信を送った。
永川安瑠は翌日、いつも通り出社した。ニロの嘲笑と軽蔑の混じった視線を意図的に無視し、自分の仕事に専念した。
あのデザイン画はすでに提出され、サンプル製作が始まっていた。サンプルは今日届く予定で、おそらくもう配送中だろう。
安瑠はただ、職人たちがリングの問題点に気づき、宝石をもっとしっかりと嵌め込んで、簡単に外れないようにしてくれることを願っていた。
今回のメインデザインに使用される宝石は、翡翠がオーストラリアから空輸した最高級の天然ブルーダイヤモンドだと聞いている。その価値は言うまでもない。
たとえ小さな欠陥でも、メインデザイン全体の価値に影響を与えてしまう。
ニロはサンプルが到着したという電話を受けると、すぐに立ち上がって外へ向かった。安瑠の横を通りかかった時に立ち止まり、挑発的に言った。「やっぱりね、チーフデザイナーのデザインに問題があるわけないじゃない。ある人は見栄を張るのが好きなのよね」
そう言うと、ウェーブのかかった髪をさらりと整え、妖艶な姿でハイヒールを鳴らしながらオフィスを出て行った。
安瑠は呆れた。彼女はもう以前の些細な摩擦をほとんど忘れていたのに、なぜこのニロはそんなに記憶力がいいのだろう?
ディレクターはニロとスタッフを連れてサンプルを持ってきて、全員を会議室に集め、今回のメインデザインを鑑賞するよう促した。
通常、アシスタントには鑑賞する資格はないのだが、今回のデザインは翡翠にとって非常に重要で、栄えるも共に、傷つくも共にということで、ディレクターはこのフロアのデザイナーもアシスタントも全員が鑑賞できるよう提案した。
安瑠はサンプルに問題がないか確認したかったので、会議室に入り、自分の席に座った。
ディレクターは錦の箱をプロジェクターの下に置き、神秘的に言った。「気を散らさないで。美しい天然ブルーダイヤモンドの魅力を目撃しましょう…」
皆の好奇心は高まっていた。実際、ジュエリー企業で働いていると、特に翡翠のような国際的な会社では、最高級の宝石やダイヤモンドは珍しくないが、それでも毎回見るたびに、その魅力に圧倒されずにはいられない。