第50章 社長秘書

自分の好きなことをするためにペンを取る?

彼女は考えた。

もちろん、彼女はそうしたいと思った。

しかし問題は彼女がしたいかどうかではなく、できるかどうかだった。

永川安瑠は目の中の痛みを隠し、真剣で正直な表情で葉山逸風に言った。「今の仕事をきちんとこなすだけで十分満足しています。それに社長は私を買いかぶりすぎです。もし私にその才能があるなら、なぜ単なる秘書に甘んじているでしょうか?そう思いませんか?」

彼女は「私の言うことは正しいし、嘘なんてついていません」という表情で逸風を見つめ、その輝く瞳には少しの偽りも見えなかった。

逸風の直感は、それが本当ではないと告げていた。しかし安瑠の態度は断固としており、彼女を無理に押し付ければ、逆効果になるかもしれない。

「それなら、あなたを私の側に秘書として異動させてはどうだろう?あの日、谷川謙のデザイン図の問題を見抜いたと聞いている。これからは提出されたデザイン案をチェックして、問題がないことを確認してから製造に回すという仕事を担当してもらおうか?」

逸風の穏やかな声には問いかけの調子があったが、最後には少し強引に決めてしまった。

これは「間違い探し」をさせられるということ?「めざせ!ウォーリーを探せ」的な展開?

安瑠は口角を引きつらせながら、逸風を見て少し躊躇した後、弱々しい声で尋ねた。「あの、社長秘書の給料は普通の秘書より高いのでしょうか?」

逸風:……!

彼は本当に初めてこのような女性に出会った。彼の側で秘書を務めることは翡翠の多くの人が望んでいることなのに、彼女は給料にしか興味がないのか?

そうでなければどうする?安瑠は耀星から送られてきた二百万以上と、海外で貯めたほとんど残っていないお金を持っているだけで、基本的には貧乏人レベルだった。

しかも物価が天井知らずで毎日信じられないスピードで上昇している茨城では、彼女の二百万はまったく足りない。アパートの一年の家賃だけで百万以上もかかってしまった……

考えるだけで安瑠は心も肉も毛穴まで痛くなった。

彼女がお金を愛さないなんて、天に誓って嘘だ!

「もちろんだよ。おそらく今の給料の約3倍になるだろう」逸風は考えてから、指で3を示した。

3倍、今の彼女の給料の3倍はいくらだろう?