ニロは永川安瑠が得意げな笑みを浮かべながら荷物をまとめている様子を見て、非常に腹が立った。彼女は一年間努力してきたのに社長の目に留まることはなく、彼に見向きもされなかった。
しかし、この永川安瑠は会社に来てどれだけの期間だろう?まずは谷川謙に認められてデザイナーに昇進させようとし、次に社長が出張から戻ってきたばかりなのに、彼女を社長秘書に昇進させるというのだ!
安瑠はただコーエンノール大学を卒業して海外で2年間研修を積んだだけで、それに少し整った顔を持っているだけなのに、なぜ?なぜなの?!
きっと安瑠が社長を誘惑したに違いない。そうでなければ、社長が彼女に初めて会ったときに昇進させるはずがない。
「ふん、調子に乗ってる人もいるわね。社長が戻ってきたばかりなのに昇進だなんて、どんな手を使ったのかしらね」ニロは酸っぱい口調で、濃い嘲笑と軽蔑を込めて言った。
オフィスは彼女のこの一言で突然静かになった。まるで目が覚めたかのように皆が安瑠を疑わしげに見つめた。
そうだ、ニロの言うことは理にかなっている。社長はちょうど出張から戻ったばかりで、安瑠は新入社員なのに、なぜ社長は他の誰でもなく、ただ安瑠だけを選んだのだろう?
安瑠は荷物をまとめる動作を止め、腕を組んで挑発的な表情を浮かべるニロに向き直った。彼女は美しい眉を少し上げ、驚いたように言った。「ニロさん、私の能力を疑うのは構わないけど、でも社長の目を疑うなんて、どうかしら?」
ニロは一瞬固まり、すぐに我に返った。社長室のドアを恐る恐る見て、激しく安瑠を睨みつけた。「永川安瑠!誰が社長の目を疑ったって言うの?勝手なこと言わないで!」
「あら?私が勝手なことを言ってるの?じゃあ、そういうことにしておきましょう。私の能力は、皆さんの目に明らかだと思います。もし皆さんが、社長が他の理由で私を昇進させたと思うなら、皆さんの目には社長はそんな浅はかな人に映っているのでしょうか?」
安瑠は軽く唇を曲げ、説得力のある言葉で巧みにこの問題を彼らに投げ返した。
もし彼らが安瑠は他の手段で出世したと言うなら、それは葉山逸風が浅はかだと言っていることになる。逆に、そうでないと言えば、彼女の能力を認めることになる。
ニロは歯ぎしりしながら、そうだと言っても違うし、そうでないと言っても違う。彼女は怒りで一杯だった。