もう一つ、そして最も重要なものがある。
野方若秋の表情が変わり、先ほどよりもさらに不本意そうに手提げバッグを探り始めた。しばらく探しているふりをした後、ようやく非常に惜しむように箱をバッグから取り出し、ゆっくりと永川安瑠の前に押し出した。
安瑠はその箱を見た瞬間、目が輝いた。この箱は、彼女が幼い頃から何度も見てきたもので、特別な感情を抱いていた。箱の細かな模様さえも彼女には馴染み深く感じられた。
箱は既に安瑠と永川安暁の前に置かれていたが、若秋はまだ手放したくないようで、その箱を見る目には自分のものにしたいという強い欲望が宿っていた。
安瑠は若秋の意図を見抜き、そのチャンスを与えなかった。手を伸ばして箱を取り、安暁と一緒に開けた。
それは一揃いのアクセサリーで、指輪一つ、ネックレス一本、イヤリング一対があった。
待てよ、なぜ三点だけ?
安瑠は何かが足りないことに驚いて気づいた。彼女は小さい頃から母親がこれらのアクセサリーを取り出して磨いているのを見ていたので、間違えるはずがない。この中には…ブレスレットが一つ足りなかった!
そのブレスレットは、かつて母親が毎日手放さずに身につけていたものだった。後に野方邸を離れた後、人に目をつけられることを恐れて外し、保管していたのだ。
それはこのアクセサリーセットの中で、母親が最も気に入っていた一品だった。
安暁も何か違和感に気づき、顔色が一変した。
安瑠はパンと箱をテーブルに置き、眉をひそめ、鋭く冷たい目で若秋を見つめた。「この中にブレスレットが一つ足りないわ!あなたがそのブレスレットを持ち去ったんでしょう!」
彼女の視線があまりにも鋭く確信に満ちていたため、若秋は一瞬心が揺らいだ。しかし、安瑠にそのように怯えさせられることに不満を感じ、表面上は冷静を装って言った。「あのブレスレットは…」
若秋はため息をついた。当初、これらのアクセサリーが返還される日が来るとは思ってもみなかった。もし今日のことを予測していたら、あんな愚かなことはしなかっただろう。
「依人よ。数年前、依人がパーティーに出席する際、彼女の頼みを断れなくて、ブレスレットを貸したの。ところが世紀の人に気に入られてしまって、依人は気が小さくてこういうことがわからないから、高額で売ってしまったのよ。今は世紀のショーケースに飾られているわ…」