第128章 局面の逆転

皆の口元が引きつった。どれだけ不注意だったら、これにぶつかって、しかもものを倒してしまうのだろうか？

橋本南は顔では無邪気に笑っていたが、心の中では滝のような涙を流していた。まさかこんな悪どいことをさせられるとは、あの独断的な男しか思いつかないだろう！

「ご安心ください、この花瓶の費用がいくらであれ、必ず相応の賠償をさせていただきます」南はそう言いながら、一枚の白紙の小切手を取り出して尋ねた。

人の大切な花瓶を割ってしまい、そしてお金で賠償する。南は本当に武内社長が何を考えているのか、ますます分からなくなってきた。

「あなたは武内さんの特別補佐ですか？」葉山逸風は南を認識し、怒り狂う藤原取締役を手で制しながら前に出て言った。

南は頷いた。「はい、葉山社長、こんにちは。今回は本当にご迷惑をおかけしました」

逸風の笑顔はやや硬かったが、南の謝罪の態度があまりにも良く、さらに武内衍の特別補佐であることから、あまり難しく出るのも良くないと思った。

藤原取締役でさえ、「武内さん」という三文字を聞いた時点で立ち止まり、黙って南を睨みつけていた。

「もし葉山社長がこの金額にご満足いただけないようでしたら、我々の武内社長と相談していただいても結構です。もちろん、全く同じ花瓶をお賠償することも可能です。すべてはお任せします」加害者であるにもかかわらず、南の言葉には少しの罪悪感もなく、小切手を差し出した。

「全く同じ清朝乾隆時代の琺瑯彩双耳瓶を？！」藤原取締役は驚いて声を上げ、老いた顔をきつく皺寄せた。

このような花瓶は非常に貴重で独特なもので、もう一つ同じものを見つけるのは天に登るほど難しい。

しかし南は微笑みながら答えた。「はい」

世紀インターナショナルにできないことはない。言い換えれば、武内衍にできないことはない。

逸風は眉をひそめ、穏やかな表情が沈んだ。彼はこの人が...わざと花瓶を倒したような気がした。

しかし、なぜ？そんなことをする理由があるのだろうか？

世紀が翡翠の毎年の業績を快く思っていないから、会社の宝物を破壊しに来たのか？

そこまでではないだろう。彼らの一年の業績は世紀の目には、全く物の数ではないのだから。