第165章 おじさん、美味しい?

「どう?」秋宛はにこにこと彼女を見つめながら尋ねた。

永川安瑠は頷きながら、小さな口をもぐもぐさせた。秋宛の思いやりに満ちた笑顔を見て、心に暖かさが広がった。「秋宛、どうして私のことを信じてくれるの?」

実際、みんなが彼女を信じなくても、不思議には思わなかっただろう。

こんな状況では、誰であっても、圧倒的なニュースの前では、その人を信じる選択はしないだろうから。

「特に理由なんてないわ。誰かを信じるのに理由なんて必要ないもの。ただ純粋にあなたを信じているだけよ」秋宛は彼女にウインクした。「あなたの人柄を信じているの」

安瑠は思わず噴き出して笑い、ずっと緊張していた神経もそれによって和らいだ。

秋宛と別れた後、安瑠は黒いワールドデュークが自分に向かってゆっくりと走ってくるのを見た。そして彼女の前で停車した。

プライバシーフィルムが貼られた車の窓がゆっくりと下がり、絶世の美しさを持つ顔が現れた。

安瑠は少し驚いた。「武内衍……」

「乗って」衍は少し顔を傾け、彼女に乗るよう促した。

安瑠は少し緊張して周りを見回し、誰も見ていないことを確認してから車の反対側に回り、橋本南が開けてくれたドアから後部座席に滑り込んだ。

彼女が衍と一緒にいることを恥ずかしいと思っているわけではなく、今でもあの契約書と、3年前のあの人との約束を覚えているからだった。

一緒にいられないと分かっていながら、それでも期待を抱いてしまうなら、きっと彼女はどんどん深みにはまっていくだろう。

安瑠は衍が今日の出来事について尋ねてくるだろうと思っていたが、車に乗った後、彼は目を閉じて休んでいるようで、質問も心配の言葉もなかった。それに安瑠は少し落ち込み、がっかりした。

あなたが私を無視するなら、私もあなたを無視してやる。

ここ数日、衍との関係がとても良好だったため、安瑠の小さな勇気も大きくなっていた。彼女は衍に向かって「ふん」と鼻を鳴らし、顔を背けて窓の外を見た。

窓の外の景色が流れていき、安瑠は車のガラスに映る自分の怒った顔と、隣でずっと動かない衍の姿を見ることができた。

「武内社長、永川さん、着きました」運転席から橋本の声が聞こえ、安瑠は窓ガラスに映る衍の姿から視線を外した。振り向くと、橋本の少し冗談めいた目が見えた。

あぁ、恥ずかしい……