第208章 別のブランドに変えて

永川安瑠は怒りを発散するように彼の肩と腕を引っ掻き、歯を食いしばって耐え、瞳の光も次第に薄れていった。

終わった後、武内衍は慌てることなく安瑠の体から離れ、傍らの衣服を手に取って着始めた。その動作はゆっくりと優雅で、先ほどの狂気がなければ、安瑠は今の衍が儒雅で魅力的だと感じたことだろう。

しかし事実が証明するように、彼は狂人だった！

安瑠は心身ともに疲れ果て、起き上がる力もなく、ソファーに横たわったままだった。垂れ下がった細く白い腕には青紫の痣が交錯し、ソファーの毛布は彼女の体を辛うじて隠せるだけで、隠しきれない痕跡が彼女の雪のような肌に暧昧に散らばっていた。

一滴の涙が安瑠の目尻からゆっくりと流れ落ちた。

以前の衍は彼女の存在をどれほど嫌っていても、今日のように彼女に深い屈辱感を与えることはなかった。

衍は服を着終えると、冷たい目で安瑠を一瞥し、リビングを出て行った。

安瑠が衍はもう戻ってこないだろうと思った矢先、彼は戻ってきた。手に箱を持ち、それを彼女の前に投げつけた。

安瑠は辛うじて手を伸ばしてその薬の箱をひっくり返し、箱の文字を見た瞬間、顔色が真っ青になり、唇からも血の気が引いた。

彼はこんなものを彼女に飲ませようとしているのか……

「薬を飲め。お前のような不埒な女に、我が武内家の純血を宿すことは望まない」衍は絶望に満ちた表情の安瑠を見下ろし、冷たい声で言った。

ふん。

笑える。

本当に笑える。

安瑠は嘲笑いながら、突然手にあった避妊薬を衍に向かって投げつけた。それは衍の頭に当たり、彼女は目を赤くして睨みつけた。「衍、あなたは人間じゃない！」

衍は彼女が投げた薬を避けようとせず、ただ表情をさらに厳しくした。彼は身をかがめて床の薬を拾い上げ、再び安瑠の前に投げ返した。「飲まなくてもいい。だが後悔するなよ」

安瑠は靴べらでも投げつけたい気分だったが、体に力が入らなかった。彼女は冷笑し、衍を見て嘲るように言った。「私、このブランドの薬は飲まないの。別のにしてくれる？」

こんな薬を飲ませようなんて！冗談じゃない！

安瑠はただ衍を怒らせるために言ったのだが、思いがけず衍は本気にした。

衍の冷たい表情に亀裂が走り、大股で近づくと安瑠の首を掴み、森寒い声で問いただした。「お前、俺に黙って薬を飲んでいたのか？」