永川安瑠は先月の売上高が最も高いデザイナーとして、出席する予定だった。
今回のジュエリー展には墨川石師匠も招待されるという噂だったが、墨川石師匠はいつも控えめな性格で、出席するかどうかはまだ確定していなかった。
そして武内易之が武内家の代表として、このジュエリー展に出席することになっていたが、これは安瑠の予想外だった。
「社長、墨川石師匠は私たちの招待を断りました。用事があるとのことです」橋本南は電話を切った後、武内衍に報告した。
衍は表情を変えず、この結果に特に驚いた様子もなかった。「他に何か言っていたか?」
「永川若さんの体調が良くなったら、彼女を連れて訪問すると言っていました」
「治療の結果はどうだ?」
「とても良好です。もう少しすれば、若さんは普通の人のように生活できるようになるでしょう」
普通の人のように生活?
衍の細長い黒い瞳は深く鋭く、冷たい光を秘めていて、一目見ただけではその深さを測り知れなかった。
ジュエリー展の当日、会場は皇宮の98階に設置され、来場者は特別に作られた招待状を持って警備チェックを通過してから入場することができた。
訓練キャンプのチームがセキュリティとして周囲をパトロールし、ジュエリーと来場者の安全を確保していた。
安瑠は衍と一緒に来ることはなく、葉山千恵を誘って入場した。千恵は葉山家のお嬢様として、招待状を手に入れるのは非常に簡単だった。
「わぁ、安瑠、あなたの旦那さんって本当に太っ腹ね。会場の設営だけでも数億はかかってるんじゃない?まったく、お金持ちは違うわね」千恵のこの様子を見れば、初めて会った人は田舎娘だと思うだろうが、実は彼女はお嬢様だった。
安瑠は彼女を軽く叩き、食事テーブルの方へ引っ張っていった。「演技はやめなさいよ。あなたの葉山家だって、あなたみたいな太っ腹な娘を育てたじゃない」
千恵:「……」
「永川さん、もうすぐ始まりますので、あなたの作品に問題がないか確認しに行きませんか?」世紀の社員が安瑠の側に来て言った。
安瑠はちょうどブドウを一粒口に入れたところで、まだ飲み込めていなかった。「前に夏目部長が確認したんじゃないですか?」
「それについては分かりません。とりあえず私と一緒に見に行きましょうか?」