第11章 伝説の恋愛脳?

「お腹いっぱい」深谷千早は箸を置き、この瞬間、やっと生き返った気がした。

「口を拭きなさい」藤原宴司が促した。

千早はナプキンを取って拭いた。

「右側」

千早はさらに右側を拭いた。

「右側だと言っているんだ」宴司の声が少し低くなった。

千早は我慢して、もう一度右側を拭いた。

「なんでそんなに鈍いんだ?!」宴司は千早のナプキンを取り上げ、彼女の顔を拭いてやった。

拭きながら不満そうに言った。「左右も分からないのか?」

「左右が分からないのは私?それともあなた?」千早は本当に我慢できなかった。「これは左側よ」

「……」宴司の指が少し強まった。

頭の中で素早く考えた。

確かにこれは千早の左頬で、彼から見れば右側だった。

表情が微妙に変わり、明らかに少し気まずそうだった。

傍にいた明石和祺は思わず笑い声を漏らした。

宴司が一瞥を送った。

明石はすぐに頭を下げた。

ただ、社長は社長夫人の前では、知能指数が下がるようだと思った。

これはいわゆる恋愛脳というものなのか?!

「自分で拭け」宴司はナプキンを千早に投げ、立ち上がって去った。

千早は宴司の腹立たしげな様子を呆れて見ていた。

まったく、下手くそなくせに強がって、しかも負けず嫌い。

……

翌日。

千早は電話の音で目を覚ました。

彼女はぼんやりと着信を確認した。

危うく忘れるところだった。今日は小林温子と一緒に家を買いに行く約束をしていた。

急いで電話に出て、寝坊したことを謝ろうとした。

しかし相手の最初の言葉は「藤原野郎がダイヤモンド買ったの?」だった。

「……」千早は一瞬戸惑った。「どうして知ってるの?」

「世界中が知ってるわよ。トレンド入りしてるし、みんなあなたの藤原野郎がバカでお金持ちだって言ってるわ」

千早は「プッ」と笑い声を漏らした。

大多数の人の目はやはり確かなようだ。

「じゃあ電話してきたのは、私と一緒に彼を笑うため?」千早は苦労してベッドから起き上がった。

「本当は笑うつもりだったのよ」温子は憤慨した様子で言った。「市場価格の倍以上の値段であの宝石を買うなんて、お坊ちゃまがやることでしょ?でも父が言うには、藤原宴司のこの宣伝戦略はすごいらしいわ!」

「宣伝戦略?」