第67章 晚餐会（1）_2

「もちろん彼を避けて、そうしないと……」

「奥様」背後から突然男性の声が聞こえた。

深谷千早は振り返り、スーツ姿で立っている明石和祺の満面の笑みを見た。「いらっしゃいましたか」

「ええ」千早は応じ、さらに付け加えた。「藤原宴司の母が私を連れてきたの」

明石は彼女が招待状を受け取っていないことを最もよく知っているはずだ。

もちろん明石のような賢い人はそれを口にしないだろうが、彼女は彼に一言言っておく必要があった。

もし宴司が尋ねてきたら、彼が彼女のために説明できるように。

「奥様、席にご案内しましょうか？VIP専用エリアの座席を手配します」明石はVIPエリアを指さした。

「結構よ」千早は断った。

そして突然言った。「藤原宴司には私が来たことを言わないでくれる？」

「なぜですか？」

「宴司は私が来るのを望んでいないでしょう？」千早は問い返した。

明石は唇を引き締めた。

実は彼も社長がなぜ社長夫人を招待しなかったのか分からなかった。

しかし彼は、社長が彼女に来てほしくないわけではないと感じていた。

「とにかく彼には言わないで、私もそう長くはいないから」千早は再び言った。

「かしこまりました」

「あなたは忙しいでしょうから、私のことは気にしないで」

「奥様、ご自由にどうぞ。何かございましたらいつでもお電話ください」

「わかったわ」

明石は敬意を表して立ち去った。

小林温子は明石の後ろ姿を見て、「藤原野郎より、彼の秘書の方がよっぽど見た目がいいわね」と言った。

千早は微笑んだ。

英雄の見解は一致するものだ。

二人はパーティーの隅へと歩いていった。

前方は尊い来賓のためのスペースだったが、千早は人混みに加わりたくなかったので、温子はずっと彼女の側にいた。

彼女は温子より3ヶ月年上で、温子は幼い頃からずっとついて回る子だった。

彼女がどこに行っても、温子はそこについて行きたがった。

実際、彼女と温子の仲が良いのは、主に彼女の母と温子の母が親友で、二人が幼い頃から一緒に育ったからだ。

そして幼い頃の温子はいたずら好きで、毎回温子と一緒に責任を取っていたのは千早だった。温子は千早に義理があると感じ、千早との友情も深く根付いていった。