「急に気づいたんだけど、あの二人って、お揃いの服を着てるじゃない」小林温子は我慢できなくなった。
深谷千早は温子に、今日の二人の服装は自分のセンスで選んだものだとは言い出せなかった。
ステージ上で、藤原宴司は紳士的にお辞儀をした。
会場から大きな拍手が沸き起こった。
宴司はマイクを手に取り、磁性のある声で堂々と話し始めた。「本日は皆様、藤原蘭ジュエリー初のファッションディナーにお越しいただき、誠にありがとうございます。私個人として、また藤原蘭ジュエリーを代表して、皆様のご来場に心より感謝申し上げます!」
「彼の本性を知らなかったら、あの外見に騙されるところだったわ」温子はずっとぶつぶつ言っていた。
宴司が何をしても、彼女は何か言わずにはいられないようだった。
「この機会に、藤原蘭ジュエリーのブランドアンバサダーである白井香織さんを正式にご紹介させていただきます」宴司は自ら香織の名を挙げた。
香織は優雅に微笑んだ。
彼女は軽くお辞儀をし、緊張を隠しきれない様子だったが、芸能界で長年活躍してきただけあって、堂々とした立ち振る舞いを見せていた。
「クソ、このクソ男!」温子は横で罵っていた。
「続いては、ご来場の皆様にお食事とジュエリー鑑賞のお時間をお楽しみいただきます。今宵のパーティーが皆様にとって素晴らしいものになりますよう願っております」宴司は言い終えると、再度お辞儀をし、香織と共にステージを降りた。
並んで歩いているとはいえ、香織の親密な態度は、二人の関係について疑念を抱かせるに十分だった。
二人が噂について公に応えたことは一度もないにもかかわらず。
「千早、やっと分かったわ。あなたが今夜緑のドレスを着てきた理由」温子はステージを見つめながら、ふと呟いた。
千早は温子を見た。
「本当に広大な緑の草原ね」温子は感心したように言った。
「……」
純粋な、偶然だ。
……
宴司と香織がステージを降りると、会場の照明が順に明るくなった。
また一夜、星が輝く夜となった。
深谷夕遅はずっと深谷挙之介の側にいて、VIP席に座っていた。
実際、深谷家の地位ではこんな主要な席は通常ありえないはずで、そこに座っている時、彼らはまだ少し興奮していた。特に夕遅は席に座りながら絶えず写真を撮ってSNSに投稿し、優越感に浸っていた。