第70章 晚餐会(4)難癖をつける

「確かに」藤原宴司も自分のデザイン面での不足を否定しなかった。

実際、多くの高級ジュエリーは、ある一定の価値に達すると、デザインよりもダイヤモンド自体の高貴さや希少性、あるいは卓越したカット技術による市場価値の向上に重点が置かれるようになる。

しかし本当は、優れたデザイナーが単なる価値だけのジュエリーに物語を与え、命を吹き込むことができる。

それこそがデザインの真の魅力なのだ。

そして、本当にジュエリーを理解している人は、決してジュエリーの品質だけを見るわけではない。

「藤原蘭ジュエリーはまだ設立されて間もないし、君もまだ若い。次回のパーティーでは、違ったジュエリーの祭典を見せてくれると信じているよ」アンムセイは励ましの言葉をかけた。

彼は宴司が従来の意味でのビジネスマンではなく、ジュエリーに対する十分な情熱と追求したいものを持っていると感じていた。

そのような人物が目先の利益に惑わされなければ、将来の発展は計り知れない。

おそらく次のチャームになるかもしれない。世界最高級のジュエリーブランドの一つに。

「アンムセイさんのご評価に感謝します。次回はご期待に沿えるよう努めます」宴司はグラスを掲げた。

彼らの間には確かに競争関係が存在するかもしれない。

しかし、本当に器の大きい企業は、自社をより良くすることだけを考え、他社が進歩するか衰退するかを気にしない。

真の競争とは、互いに共に進歩することなのだ。

パーティー会場の一角。

宴司の側を離れて一人で販売促進をしていた白井香織は、今、深谷千早を見かけた。

彼女はブランドの代表として、当然重要な任務を負っていた。

宴司が彼女にKPIを課していなくても、彼女は藤原蘭ジュエリーに貢献すべきだと感じ、パーティー会場で熱心にジュエリーを宣伝し続けていた。

彼女は自分が最初に数千万円クラスのジュエリーを売りたいと思っていた。

しかし、すでにこんなに早く売れてしまった。

しかも買ったのは二十歳そこそこの若者だった。

買った人が千早だと知った瞬間、香織の表情はさらに悪くなった。

この女はあまりにもお金を持ちすぎている。

一体何をしているのだろう?!

バックにいるスポンサーは誰なのか?

一受付嬢がどうしてこんなにお金を持っているのか?!