深谷千早はこの時になってようやく気づいた。藤原蘭ジュエリーのイベントに参加している芸能人たちは、例外なく藤原蘭ジュエリーの宝石を身につけ、VIP客の間を行き来しながら、まさに販促活動をしているようだった。
千早は思わず頷いた。
小林温子の言うとおりだ。藤原宴司という人間の人柄はさておき、ビジネスマンとしては、本当に儲けまくっている!
ちょうどその時。
ある芸能人が千早と温子の前に歩み寄ってきた。
かなりハンサムな若者で、見たところ二十歳そこそこだった。最近あるドラマに出演して、第二主役を演じ、少し話題になっていた。
千早は名前を思い出せなかった。
ゴシップ好きの温子はすぐに彼を認識した。「成田輝だ」
「お姉さん、僕のこと知ってるんですか?」輝は顔を輝かせて喜んだ。
「もちろんよ。こんなにイケメンなんだもの。実物はもっとカッコいいわね」
「お褒めいただきありがとうございます」
「ジュエリーを売りに来たの?」温子は一目で輝の目的を見抜いた。
「はい、今夜はノルマがありまして」輝も正直に答えた。
今夜のイベントでは、おそらく事前に研修を受けているのだろう。
「ノルマはどれくらい?」温子は尋ねた。
輝は指で数字を示した。
「そんなに多いの?」温子は驚いた。
若手芸能人のノルマがこれほど大きいなら、トップスターたちは気が狂いそうだろう!
藤原宴司はかなり搾取するタイプだな。
「マネージャーが、ここには高級顧客ばかりだから難しくないって言ってたんですけど」
「でも、まだ売れてないの?」
「はい」輝は首を振った。「人混みに入れなくて」
温子はその方向を見た。
本当に地位のある招待客には、当然トップスターが担当するよう手配されていた。
「わかったわ、私が一つ買ってあげるわ。タピオカミルクティーをおごるつもりで」温子は気前よく言った。
せっかく来たのだから、手ぶらで帰るわけにもいかないだろう。
それに彼女の父も言っていた、今夜は気に入ったものは何でも買っていいと。
あの老人が突然そんなに寛大になったのは、主に藤原宴司に取り入りたいからだった。
輝はスタッフにタブレットを持ってくるよう頼んだ。
温子はタブレットで選びながら、眉をひそめて呟いた。「宝石はいい宝石だけど、デザインがちょっと平凡すぎるわね」