第64章 ドレスでの出会い

藤原宴司は深谷千早を見つめ、彼女の意見に少し驚いた様子だった。

千早は説明を加えた。「いわゆるファッション誌というのは、若さやカジュアルさだけを追求するものではないんです。実際、現代の大衆の美意識は多様化していて、今流行の禁欲的なスーツスタイルの方が若者に好まれているんですよ」

宴司は眉をひそめた。

少し躊躇している様子だった。

千早も彼に無理に同意を求めることはしなかった。結局、美的感覚は人それぞれだ。

ただ彼が尋ねてきたので、自分の意見を述べただけだった。

宴司は身を翻して千早の寝室から出て行った。

千早はほっと息をついた。

服を着替えるだけでも落ち着かない。

彼女が外出着に着替え終わったところで。

ドアが再び開いた。「やっぱり、君が来て選んでくれないか」

千早は眉をひそめた。

まあいい、せっかくだから最後までやろう。

彼女は宴司について彼の寝室へ、そして彼専用のクローゼットへと入った。

開かれた棚には、一色のスーツとワイシャツが並んでいた。

千早は真剣に選び、その中から一着の黒いスーツを取り出した。

記憶では宴司がこれを着ているところを見たことがない。

間違いなければ、これはDブランドの今シーズンの新作のはずだ。

「これを試してみて」

宴司はそれを受け取ると、千早の前で遠慮なく着替え始めた。

千早はやはり少し気まずく感じた。

彼女は身を翻した。

目の前には大きな姿見があった。

鏡越しにはもっとはっきり見えてしまう。

千早は目を動かした。

視線をそらそうとしたが、自分が神経質すぎると感じた。

宴司の体のどこを見たことがないというのだ?!

彼のお尻のほくろさえ、宴司本人が知らなくても彼女は知っているのだ。

視線は堂々としたものになった。

しばらくして。

宴司は着替え終わった。

言うまでもなく、彼女の目は確かだった。

Dブランドのこの新作を見たとき、彼女はすぐに宴司の雰囲気に合うと思っていた。

高貴で、上品で、禁欲的な。

「ネクタイは必要?」宴司が彼女に尋ねた。

スーツが届いたときは一式揃っていたので、ネクタイも付いていた。

「別のにしましょう」宴司が自分の首に巻こうとしたとき、千早は銀色のネクタイを新たに取り出した。「今のは少し厳格すぎます」