唐津は横で絶え間なく褒め続けた。「白井さんがこのドレスを着ると本当に美しいです。まるであなたのために作られたようです。あなた以外、誰もこのドレスを着こなせません。さっきのあの方なんて、比べ物になりませんよ」
実際のところ。
目の利く人なら誰でも、深谷千早の方が着こなしていることは明らかだった。
SAは横で白目を剥きそうになっていた。
白井香織は唐津の褒め言葉を聞いて、気分が良くなった。
彼女は深谷千早の方を向いて言った。「このドレスを譲ってくれてありがとう。別にあなたとドレスを奪い合うつもりはなかったのよ。私が藤原蘭ジュエリーの広告塔だってことは知ってるでしょう?今夜は私のメインステージだから、きちんと着飾らないといけないの。藤原蘭ジュエリーの面目のためでもあるし、あなたも藤原蘭ジュエリーの社員として理解してくれるわよね?」
「はい、理解しています」千早は微笑んだ。
「安心して。今度、藤原社長の前であなたのことを良く言っておくわ」香織は鏡の中の美しい自分を見ながら言った。「そういえば、あなたの名前は何?藤原社長に伝えられるように」
「いいえ、結構です。これは私の当然の務めですから、白井さんは気にしないでください」
「藤原蘭ジュエリーにあなたのような社員がいるなんて、藤原蘭ジュエリーの幸運ね」香織は欲しかったドレスを手に入れて、言葉遣いもずっと優しくなった。
千早は横で微笑むだけだった。
香織はしばらく鏡を見た後、彼女のSAに向かって言った。「これにするわ。カードを通してちょうだい」
そう言って、銀行カードを取り出した。
取り出した瞬間、わざわざ千早に言った。「これはあなたの藤原社長が私にくれたカードよ。好きなだけ使っていいって」
実際には自分の地位や立場を自慢したいだけだった。
また、今日彼女に譲ったけれど、全く損はしていないということを伝えたかったのだ。
千早はただ微笑むだけだった。
香織のSAはカードを受け取り、丁寧に尋ねた。「白井さん、当店のVICカードをお持ちですか?」
「VICがないと買えないの?」香織はエンターテイメント業界に身を置き、高級ブランド製品の常連客でもあるため、当然ここのルールを理解していた。