SAは恐らく芸能人の二面性を見慣れているせいか、特に驚きもせず、ただ態度が明らかに冷淡になった。「申し訳ありませんが、白井さん、これは弊社の規定ですので、私どもにもどうすることもできません」
「今日は藤原蘭グループの晩餐会に出席するんですよ。あなたたちもニュースを見ていれば、この晩餐会がどれだけ価値のあるものか分かるでしょう?私がこれを着ていくことは、あなたたちのブランドの宣伝になるのよ!」香織はまだ食い下がっていた。
深谷千早は傍らで少し可笑しくなった。
高級ブランドは確かに宣伝を必要としているが、それ以上に地位を必要としている。
白井香織はある程度の知名度はあるものの、藤原蘭ジュエリーの代理人以外に他の高級ブランドの代理人はまだ務めていない。このブランドのオートクチュールを着て晩餐会に参加したところで、ブランドの価値を下げるとは言わないまでも、ブランド側も特に光栄とは思っていないだろう。
そもそも高級品が高価なのは、誰もが手に入れられるわけではないからこそだ。
SAもはっきりとは言わず、ただ淡々と答えた。「大変申し訳ございませんが、これは会社の規定ですので、私どもにも変えることはできません」
「責任者を呼んでください」香織は諦めなかった。
今日このままみすぼらしく帰るなんて、彼女の面子はどうなる?!
SAは少し呆れたが、それでも責任者を呼んできた。
責任者は状況を理解した後も、同じ回答を出した。
香織がどう言おうと、藤原宴司を盾にしようと、何の効果もなかった。
重要なのは、宴司も出てきて一言言うこともなく、電話一本もかけてこなかったことだ。
香織は歯ぎしりした。
彼女がドレスを脱ごうとしたその瞬間、千早を見つけた。「私が買えないなら、彼女だって買えないでしょう?!」
千早に接客していたSAはすぐに言った。「こちらのお客様はVIC貴賓カードをお持ちです」
「なぜ彼女が持っているの?」香織は完全に動揺していた。
彼女はただの受付じゃないの?
SAが説明しようとした。
千早は彼女を制し、「白井さんも今後もっと購入されれば、ランクアップできますよ」と言った。
「あなたにそんなにお金があるの?まさか……」香織は眉をひそめて千早を見た。
彼女は千早が裏で何か不適切な関係を持っていると決めつけていた。
「何があったの!」