木村冬真はもちろん春野鈴音の姿を見ていた。
彼女は髪も乾かさず、彼のバスローブを着ていた。
バスローブは大きすぎて、彼女の体にだぶだぶとしていた。
露出を防ぐため、彼女は両手でバスローブをしっかりと引き寄せていた。
冬真の目には皮肉の色が浮かんでいた。
なるほど、拒むふりをして誘っているのか。
「髪を乾かしてから出てきなさい!」冬真は命じた。
鈴音はまた戻って髪を乾かし始めた。
どうせ冬真に従うだけだ。
彼の言うことがすべて。
これからは会う機会もないのだから。
彼女は今日の冬真の一連の奇妙な行動の理由を考えることさえしなかった。
聞く気もなかった。
髪を乾かし終えると、彼女は出てきた。
冬真はまだソファに座り、冷たい目で彼女を見つめていた。
彼女のシャワー後の頬の赤みを見つめていた。
バスローブは大きかったが、彼女が必死に引っ張っていても、体のラインははっきりと分かった。
彼は鈴音が下に何も着ていないのではないかとさえ思った。
冬真ののどぼとけがかすかに動いた。
少し熱くなったが、それでも顔には軽蔑の色が浮かんでいた。
彼女はどれほど慣れているのか、こんなにもリラックスしているとは。
「佐々木明正はいくら払ったんだ?」冬真は尋ねた。
「え?」鈴音は彼を見た。
「佐々木明正は一回でいくら払ったんだ?」冬真はいらだちながらも、明らかに声を強めた。
鈴音はようやく理解した。
少し考えて、「結構な額よ」と答えた。
具体的にいくらかは、すぐには思いつかなかった。
「月に十万円でどうだ?」冬真は尋ねた。
鈴音は冬真を見つめた。
「これが私の出せる最高額だ」冬真は言った。
鈴音は少し呆然としていた。
「不満か?」鈴音が反応しないのを見て、冬真の表情がさらに暗くなった。
「木村さんの言っている意味がよく分かりません」
「春野鈴音」冬真の声は低かった。
彼女の名前を呼ぶ口調は明らかに良くなかったが、どういうわけか心地よく聞こえた。
鈴音は自分の注目点が少し可笑しいと思った。
「駆け引きなんて私には通用しない」冬真は本当にいらだっていて、鈴音と言葉を無駄にする気もないようだった。「言っておく、月に十万円で、お前を囲う!」
鈴音の心臓の鼓動が速くなった。
彼女は信じられない様子で冬真を見つめた。