土曜日の夜8時のオンライン配信。
オンラインマーケティング部の全員が朝早くから手際よく忙しく働いていた。
深谷千早も各工程の準備状況を絶えず確認していた。
「八尾社長はどこ?」千早が突然尋ねた。
「朝早くから直接白井香織さんを迎えに行ったみたいです」条野紋乃が答えた。
「じゃあ彼女の担当業務は誰が代わりにやってるの?」
「佐藤秘書だと思います」
千早は頷き、さらに指示を出した。「白井さんが何時に配信ルームに来られるか確認して。できれば事前にリハーサルに来てもらって、メインパーソナリティと顔合わせしておいた方がいい。配信が硬くならないように」
「はい、八尾社長にお伝えします」紋乃は恭しく答えた。
千早はさらに配信ルームへ向かい、現場の状況を確認した。
紋乃は電話をかけ、千早のもとに戻ってきた。「八尾社長によると、香織さんはまだ撮影があって、午後3時頃まで撮影が続くそうです。終わり次第、直接こちらに来るとのことです」
「今はまだ午前10時だよ」千早は時計を見た。「八尾社長はずっとそこで待機してるの?」
「八尾社長は、香織さんは会社のイメージ代表なので当然最高の待遇を受けるべきだと言っていました。彼女と一緒に配信ルームに来るそうです」
千早はそれ以上何も言わなかった。
実際、誰もが知っていることだが、香織の格の高さはイメージ代表としてではなく、藤原蘭ジュエリーの未来の社長夫人としての立場にあった。
午後4時。
配信ルームのすべての準備が整っていた。
千早は配信ルームで現場の状況を見ていた。
「香織さんはまだ来てない?」千早が尋ねた。
「いいえ」紋乃が答えた。「深谷社長は香織さん専用の休憩室を用意しましたが、今のところ誰も入っていません」
「急かしてみて」
「はい」
しばらくして、紋乃が報告した。「八尾社長によると、香織さんはまだメイクを落としているところで、その後スタイリングがあるそうです。こちらに到着するのは6時頃になるとのことです」
「配信の流れは全部香織さんに伝わってる?彼女が言うべきセリフ、全部把握してる?」千早は念を押した。
「はい」
紋乃は電話をかけた。「八尾社長が電話に出ません」
千早は眉をひそめ、少し迷った後、直接八尾麗奈に電話をかけた。「八尾社長、香織さんについてですが…」