第110章 登山で足を踏み外す(二更)

深谷千早と藤原宴司は、スタッフに両足を縛られていた。

二人はわざとらしく練習をしてみた。

「私が『一』と言ったら、縛られていない足を動かす。『二』と言ったら、縛られている足を動かす。わかったか?」と宴司は千早に尋ねた。

千早は頷いた。

「練習してみよう」と宴司が言った。

千早は協力した。

練習ではとても上手く連携できた。

宴司は褒めた。「意外と手足の協調性がいいじゃないか」

千早は白目を向けた。

あなただけが世界一優れていると思ってるの?

競技が始まった。

全員がスタートラインに立った。

笛の合図で、皆が大声で「一、二、一、二、一、二」と叫びながら進んでいく。

千早と宴司はかなり速く進んでいた。

二人の連携は抜群だった。

すでに他の社員たちとの間に少し距離ができていた。

中には数歩も歩けずに転んでしまう人もいた。

会場には応援の声と共に、笑い声が響き渡っていた。

勝利が目前に迫ったとき。

千早はわざと足を引っかけた。

宴司が勝つのが許せなかった。

堂々たる社長が社員と10万円の賞金を争うのが許せなかった。

彼女がこうして足を引っかけると。

宴司の体は明らかにぐらついた。

結果として彼がぐらつくと、千早も引っ張られて、体全体が後ろに倒れていった。

千早は驚いて大声で叫んだ。「あっ!」

二人は制御不能に地面に倒れていった。

千早はすでに、目がくらむほどの痛みを覚悟していた。

実際に倒れた瞬間、千早は想像していたほどの痛みを感じなかった。

まるで柔らかいクッションの上に落ちたようだった。

驚きで閉じていた目を突然開けると、宴司が彼女の下敷きになっているのが見えた。

宴司の顔には苦痛の表情が浮かんでいた。

きっとかなり痛いはずだ。

千早はすぐに起き上がろうとした。

起き上がろうとすると、また二人の縛られた足に引っかかった。

体を起こしたとたん、また勢いよく倒れてしまった。

「うっ」宴司は痛みで唸った。

千早はすぐに謝った。「ごめんなさい」

「深谷千早、お前は俺の天敵か」宴司は歯を食いしばって言った。

千早は少し後ろめたく感じた。

結局、さっきの転倒は故意だったのだから。

でも彼が人間クッションになるとは思わなかった。

「立ち上がりましょう」と千早は言った。