第130章 自ら抱擁を求める(1更)

春野鈴音は木村冬真の住まいに行ったが、そこで彼女は誰でも入れるわけではないことを知った。

彼女は彼の家に行くことができず、マンションの正門さえ通れなかった。

何とか地下駐車場から忍び込んだものの、エレベーターのボタンが押せないことに気づいた。階数ボタンを押しても、何の反応もなかった。

鈴音はエレベーターから出て、じっと待つしかなかった。

冬真に電話をかけることも考えたが、電話口で即座に拒否されるのが怖かった。

結局、数日前の夜に彼女がきっぱりと冬真を拒絶したばかりだったのだから。

今さら厚かましく訪ねてきたのだ。

自分でも滑稽だと思った。

冬真がどんな風に彼女を辱めるか、想像もつかなかった。

でも考えてみれば、辱められても仕方ない。

お金さえ手に入れば良かった。

鈴音は地下駐車場でずっと待っていた。

冬真が地下駐車場から帰ってくるのか、それとも正門から直接入るのか、確信が持てなかった。

ただひたすら待ち続けた。

長い時間が過ぎた。

空が暗くなるまで待った。

見覚えのある車が見えたような気がした。

春野楽花が「とても高価」と言っていたロールスロイスだ。

その車が駐車スペースに停まり、冬真が降りてくるのを見た。

ずっと期待していたのに、実際に冬真を見た瞬間、突然どうしていいか分からなくなった。

来る途中でたくさんの言い訳を考え、冬真を待っている間も心の中で何度も練習していた。

しかし今、彼女はただ冬真が冷たく彼女の前を通り過ぎるのを見つめるだけだった。

どこからその勇気が湧いたのか、あるいは単に慌てていたのか、彼がこのまま行ってしまえばお金を手に入れられず、楽花を救えなくなると思い、彼女は駆け寄って冬真の背中を抱きしめた。

冬真の目が少し細くなった。

体が明らかに緊張していた。

しかし口調は相変わらず極めて冷淡だった。「今度は何の芝居をするつもりだ?」

「私……」鈴音は冬真を抱く手にさらに力を入れた。緊張からか、それとも突き放されるのが怖かったのか、彼女は言った。「後悔したの」

「ふん」冬真は冷笑した。

「あなたに囲われたいの」鈴音は率直に言った。

彼女は冬真が彼女の綺麗ごとの言い訳など聞きたくないだろうと思った。彼は彼女に対して忍耐力を持っていないのだから。