第138章 こっそり嫉妬する(1更)

八尾麗奈は顔を真っ赤にして現場を後にした。

藤原宴司の視線はずっと深谷千早に向けられており、時折木村冬真を見ていた。

見られ続けて冬真も少し困惑していた。

彼は言った、「今日はこれでいいでしょう。明日チームを連れてきて撮影を始めます。まずは藤原グループでの藤原社長のシーンを撮影し、予定では一日半ほどかかるでしょう。明後日の午後に残りの藤原蘭ジュエリーの部分を撮影します」

「わかりました、明日は一緒に藤原グループへ行きましょう」

冬真は頷いた。

千早との仕事は確かに楽しく気楽だった。

「明日は私も行く」宴司が突然口を開いた。

千早は眉をひそめた。「あなたが何しに行くの?」

「撮影の様子を見に行くことも許されないのか?」宴司の表情は暗かった。

「好きにすれば」千早は相手にする気がなかった。

どうせ彼は社長なのだから、好きなことをすればいい。

簡単な別れの挨拶の後、千早は冬真を見送った。

宴司も一緒についていった。

冬真は少し恐縮した様子で、「私一人で大丈夫ですよ。お二人に見送られるまでもありません。明日は時間通りに藤原グループに到着します。では明日」

千早と宴司はエントランスホールのエレベーターまで見送った。

冬真が去った後、千早も身を翻してエレベーターのボタンを押した。

宴司はゆっくりと彼女の後に続いた。

千早はエレベーターの数字を見つめながら、頭の中で仕事のことを考えていた。

「君と冬真はそんなに仲がいいのか?」宴司が尋ねた。

千早は黙っていた。

「君は本当にこういうタイプの男が好きなんだな」宴司の言葉には皮肉が込められていた。

あるいは自嘲の意味もあったかもしれない。

千早は眉をひそめて彼を見た。

本来なら相手にするつもりはなかったが、今彼はどういう神経を使っているのだろう。

「文質彬彬、温文儒雅……」宴司はぶつぶつと言った。「徳永颯もそうだった」

千早は呆れた。

これは密かに嫉妬しているのか?!

彼がどうして嫉妬する資格があるのか?!

彼は外で浮気三昧じゃないか!

「女性は皆、優しくて思いやりがあって一途な男性が好きよ」千早は率直に言った。「私だけじゃなくてね」

言葉が落ちると同時に、エレベーターが到着した。

千早はエレベーターから出て行った。