第140章 藤原宴司の積極性(一更)_2

重要なのは白井香織もそばにいたということだ。

もちろん彼女は先ほど香織が藤原宴司にネクタイを直そうとして断られた場面を見ていなかった。彼女が思ったのは、深谷千早が恥知らずの極みだということだけだった。

しかも明石和祺もそばにいた。

しかし今、和祺は八尾麗奈に背を向けていたので、彼女は彼の表情を見ることができなかった。

麗奈は今、頭が少し混乱していると感じていた。

まさか…千早が藤原宴司を誘惑したのか?!

いや。

そんなはずがない。

宴司と香織の関係は全国民が知っていることだ。千早がどれだけ美しくても、宴司はそんな浅はかな人ではない。

でも今の千早の行動は…

麗奈はすでに呆然としていた。

どう考えればいいのか全くわからなかった。

目の前の光景を見て、頭の中は本当にごちゃごちゃだった。

千早はただ適当に宴司のネクタイをいじっただけで、彼女にはネクタイに何の問題があるのか見えなかった。ただの形だけのことだった。

直し終わって、彼女は言った。「直りました」

宴司は香織の方を見て、「彼女が直してくれたか?」と尋ねた。

香織は一瞬戸惑い、すぐに我に返り、笑顔を保ちながら言った。

「直りましたよ。やっぱり男性には気づかないものですね。私たち女性の方が細かいところに気がつくんです。普段はそれほど気にならないかもしれませんが、カメラに映ると小さな欠点も大きく映ってしまうので、少しでも手を抜くことはできないんです」

「ああ」宴司は短く返事をした。

千早は尋ねた。「では今は問題ないですか?撮影を始められますか?」

宴司はうなずいた。

千早はそのまま移動した。

香織はもう少し留まり、「頑張ってね、宴司!」と言った。

それから笑顔で脇に移動した。

木村冬真が前に出て宴司と少し話し、撮影を始めようとした時。

「場を清めてくれ」宴司が突然要求した。

冬真は微笑んで、「わかりました」と答えた。

彼は振り返って他の人たちに言った。「スタッフ以外の方は、全員退出してください」

千早は少し呆れた。

本当に自分を大スターだと思っているのか、場を清めるなんて。

千早は他の人たちと一緒に退出した。

香織は動じることなく、全く退出する気配がなかった。