第185章 深谷夕遅の惨烈_2

深谷千早が去った後。

深谷おじいさんは視線を徳永颯に向けた。

颯も彼を見つめていた。

二人の沈黙を、おじいさんが破った。「お前は知ったのか?」

明らかに彼の出自の謎について知ったかどうかを尋ねていた。

「千早が教えてくれました」

「本当は一生隠しておくつもりだったんだがな。残念ながら、お前と千早の間に感情が芽生えてしまった」

颯は黙っていた。

心の中に押し込められた苦しみは、彼自身にしかわからなかった。

「まあいい、お前が今知ったことで、もう千早に執着することもなくなるだろう。お前たちの間には、この先何も起こりえないことがわかったはずだ」

「なぜ隠していたんですか?」颯は問い詰めた。

おじいさんは少し間を置いて言った。「それは誇れることではないからだ」

「ではなぜそんなことをしたんですか?」

おじいさんの表情が明らかに変わり、声も冷たくなった。「お前に私を批判する資格はない!私がお前をこの世に連れてきて、命を与えたのだ。お前は私に敬意と感謝しか示すべきではない」

颯は笑った。

力のない笑いだった。

「では、この何年もの間、私の心がどれほど押しつぶされていたか知っていますか?養子だからという理由で、この家では発言権すらありませんでした。養子だからこそ、千早を好きになってもいいと思っていました。私が彼女をどれほど愛していたか知っていますか?今の私がどれほど苦しいか分かりますか?!かつては本当にあなたを尊敬していました。頼る人もなかった私を引き取ってくれたのはあなたでした。でも今は、ゴキブリを飲み込んだような吐き気を感じます」

「徳永颯、言葉遣いに気をつけろ!」おじいさんは怒鳴った。

颯は冷笑した。「もっとひどい言葉もありますよ」

「私生児だからといって、堂々と名乗れると思うのか?私生児は深谷家の門をくぐることすらできないんだぞ!」おじいさんは厳しく言った。「感謝すべきだ。私が養子という身分で深谷家に入れてやったからこそ、お前は今ここにいられる。そうでなければ、深谷挙之介がお前の存在を許すと思うか?!お前がこうして深谷家で平穏に暮らせると思うか?!」

颯はさらに大げさに笑った。

ただ悲しいと感じていた。

かつては父親がいないと思っていた。

今やっと父親ができたと思ったら、その存在は人に見せられないものだという。