このような盛大なジュエリーデザインコンテストは、当然ながら和国のすべてのトップデザイナーの参加を引き寄せました。藤原蘭ジュエリーは新興ジュエリー会社として、デザイナー全員を参加させる必要がありました。
深谷千早は明石和祺からメールを受け取り、彼女も藤原蘭ジュエリーを代表して参加してほしいという希望が伝えられました。
藤原蘭ジュエリーは現在、和国内でのブランド影響力が非常に大きく、設立からわずか1年余りで既にジュエリー界の大きなダークホースとなっていました。
しかしデザイナーに関しては、レイトリー以外に真に国際的に名の知れたデザイナーがいないことが、藤原蘭ジュエリーの唯一の弱点でした。そのため、藤原宴司はこの度のジュエリーデザインコンテストをかなり重視していました。
千早は一日考えた末、結局丁重に断りました。
自分がレイトリーであるという身分については、最初は意図的に隠していました。深谷家は吸血鬼のようなもので、自分の身分を明かせば、間違いなく深谷家の人々に便宜を図ることになります。
もちろん、今の深谷家には彼女を脅かすものは何もなく、もう隠す必要はありません。
しかし彼女は……
いつも習慣的に自分に逃げ道を残していました。
万が一……
彼女はまだ身分を隠し、レイトリーの名前で生きていくことができます。
だから最終的に断ることを選びました。
このコンテストは国際レベルの大会と言われていますが、彼女は既に海外でいくつかの国際コンテストで優勝しており、自分を証明する必要はありませんでした。ちょうどこの機会に、ファッションデザイン界の情勢とトレンドを観察するのも良いでしょう。
大会の3日前。
千早は宴司から夕食の誘いを受けました。
千早は少し驚きました。
突然一緒に食事をしよう、外で食事をしようと言われて。
どう考えても、何か企んでいるとしか思えません。
しかしこの期間の宴司の大人しさを考慮して、渋々承諾しました。
車に座りながら、千早は宴司が何か秘密めいた様子だと感じました。
彼女は本当に、宴司が用意したのがサプライズではなく、ショックなことではないかと心配していました。
例えば、突然プロポーズの儀式とか。
彼女は今、そういったものは本当に必要としていません。彼女が必要としているのは、宴司と平穏に日々を過ごすことだけです。