病院から今田由紀に電話があったため、佐藤陸はタクシーを呼び、まず由紀を病院へ送った。本来なら車を降りて今田お母さんを見舞いたかったが、由紀は陸の体調を気遣い、その好意を断った。
「陸兄さん、先に帰ってください。私がここで母を看病すれば大丈夫です!」由紀は車から降り、陸を車内に留めながら言った。
由紀は陸のことをとても心配していた。先ほど榎本主任から電話があり、海外の専門家たちが病院に到着したと知らせてきた。彼が由紀を呼び戻したのは、母親の病状について一緒に話し合いたかったからだ。
今、由紀は非常に焦っており、心は完全に母の病気に向けられていたため、陸の世話にまで気を配る余裕がなかった。
また、陸は由紀しか知らない状態で、病院という広い環境の中で方向を見分けることができない。もし誤って迷子になったら、今度は彼を探すために気を取られることになる。悪い人に出会ったりしたら大変だ。
陸は由紀のそんな単純な心遣いを見透かしていたが、非常に協力的に頷いて言った。「じゃあ行かないでおくよ。数日後、お母さんの手術の時に来るけど、いいかな?」
「はい、陸兄さん。今はまだ何も決まっていませんが、手術の時間が決まったら、必ずお知らせします!」
結局、彼女はすでに陸と結婚しており、陸は彼女の夫なのだから、母親を見舞いに来るのに十分な理由がある。彼女も人を会わせないようにするわけにはいかない。それではあまりにも非常識だ。
陸は由紀が病院に入っていくのを見ていた。由紀は時々振り返って彼に手を振っていたが、後になって彼が見えないことに気づき、恥ずかしそうに手を引っ込め、唇を噛んで照れていた。
陸は彼女のこうした一挙手一投足をすべて見ていて、思わず口元が緩んだ。この小娘は本当に面白い。
病院側には陸がすでに前もって話をつけていた。海外からの専門家たちは元々この病院に滞在する予定はなかった。彼らはこの分野の権威で、招いても来てくれないような人物だったが、今回は突然5、6人全員がこの病院に集まっていた。
病院側もこのことを非常に重視していた。由紀が以前の病室に行ったが、母親の姿が見当たらなかった。
焦って尋ねると、母親が一般的な三人部屋から個室に移されたことがわかった。今、ベッドの周りには5、6人の白衣を着た医師たちが集まり、小声で何かを議論していた。