第089章 佐藤お坊ちゃんが可愛い宝物を怒らせた

「陸兄さん～」

今田由紀は彼に言い返せるはずもなく、彼に怒らされてプイッと冷たく鼻を鳴らし、彼を押して前に進ませた。

細田次郎はこの二人の様子を見て、いつも冷たく笑わない大ボスがこんな一面を持っているとは思わなかった。奥様に会ってから今まで、彼は大ボスが何回笑ったか数えきれなかった。

しかも彼らの前では言葉少なだった佐藤お坊ちゃん、佐藤会長がこんな風に甘い言葉で奥様を喜ばせるなんて！

奥様は本当にすごい！

今日から、奥様は彼、細田次郎の憧れの対象だ！

彼女は一言一行で簡単に大ボスの感情を左右できる女性なのだ。

由紀は陸が言うレストランはせいぜい路傍の小さな食堂程度だろうと思っていた。

しかし、高級な内装で明るく広々とした、千人以上収容できるレストランの入り口に立った時、彼女は自分の目を疑った。

「こ...これがあなたのレストランなの？すごい...」

彼女の目は輝き、何度もまばたきして、少し目まいがした。「夢じゃないよね、陸兄さん、このレストランすごく大きいわ！」

次郎は彼女の後ろに立ち、彼女の驚きの声を聞いて、心の中で思った。大きくないわけがない。

これは佐藤グループのビル全体の社員食堂で、この階だけでなく、このレストランは全部で二階あり、下にもう一階あるのだ！

陸は気にしない様子で笑って言った。「大きい？まあまあかな...」

ビル全体が彼のものだし、これは佐藤氏の本拠地に過ぎず、他の事業は全国各地に広がっている。彼はただ彼の可愛い宝物を連れてこの地下の小さなレストランを見せただけで、宝物がこんなに驚いているのを見て、これからはもっと正直に言いにくくなると思った。

「ずっと、ずっと通りにある小さなレストランだと思ってたわ、えへへ...陸兄さん、あなたの家はこんなにお金持ちだったのね！」

由紀はこのようなレストランを見て、嬉しくなるどころか、少し落ち込んで頭を下げた。

陸は彼女が少し心ここにあらずな様子を見て、彼女の冷たい手を握り、眉をひそめて、どうして彼の宝物が不機嫌になったのか理解できなかった。