今田由紀は近くのバス停で降り、保温ポットをしっかりと抱えながら、ようやく安堵のため息をついた。
彼女は佐藤陸が教えてくれたレストランの場所を探し始めた。この人通りの多い一等地で小さなレストランを見つけるのは難しいだろうと思っていた。
ところが意外にも、遠くから車椅子に座って彼女に向かって愛情たっぷりに手を振る陸兄さんの姿が見えた。
「陸兄さん——陸兄さん——」由紀は両腕を広げ、陸に向かって走り出した。
陸は少し心配そうに彼女を見つめていた。幸い佐藤タワーの入口は十分に広かったので、彼女の安全を心配する必要はなかった。
由紀は陸の前まで走り、深く息を吐き出し、息を切らしながら言った。「陸兄さん、どうして私が向こう側にいるって分かったの?」
陸は彼女を見つめ、唇の端がわずかに硬直した。突然、自分の目が悪いことを思い出した。さっきは彼女が自分を見つけられないのではと心配して、仕方なく急いで手を振ったのだった。
彼は少し戸惑った後、突然笑って言った。「私が見えるわけないじゃない。細田が君が来たと言ったから、見つけられないといけないと思って、その方向に手を振ったんだよ!」
「あぁ、そうだったんだ。へへ、陸兄さんはそんなに忙しいのに、わざわざ迎えに来てくれたの?教えてもらった住所なら、私が自分でゆっくり探しても見つけられたのに……」
見つけることはできたかもしれないが、方向音痴の彼女のことだから、おそらく見つけるまでにかなり時間がかかっただろう。
実は彼女はさっき心の中で不安だった。陸を見つけられないのではないかと心配していた。口では陸に迎えに来ないでと言ったものの、心の底では陸がこうしてくれることに感謝していた。
陸は車椅子に座り、彼女を見つめながら唇の端にかすかな笑みを浮かべた。「うん、僕の可愛い子は最高だね。きっとすぐに僕を見つけられただろうね。でも僕があまりにも早く会いたくて、待ちきれなくて、早く君に会いたかったんだ!」
由紀の顔がさっと赤くなり、陸をそっと睨みつけた。少し恥ずかしそうに顔を上げ、陸の後ろにいる細田を一瞥した。
心の中で思った。陸兄さん、こんなことしないでよ。人前で、しかも他人がいるのに、こんなこと言うなんて本当に恥ずかしい!