第137章 病院中を走り回っても彼女の陸兄さんは見つからない

今田由紀は一人で廊下のベンチに座って泣いていた。

そのとき、エレベーターのドアが開き、人に支えられながらエレベーターから出てきた高橋美奈は、向かい側にいる憎くて歯ぎしりするほど恨んでいる今田由紀の姿を一目で見つけた!

この由紀のせいで、彼女の手首は怪我をし、母親に厳しく叱られただけでなく、毎日病院の嫌な消毒液の匂いを我慢しながら、ここでリハビリを受けなければならなかった!

美奈は佐藤陸が好きだったので、当然このことを陸のせいにはせず、ただこの今田由紀という女をより一層恨むだけだった。

彼女は治療が終わったら、必ずこの生意気な女に教訓を与えようと思っていた。

まさか、彼女が探しに行く前に、この生意気な女が自ら門前に現れるとは思わなかった。

「お嬢様?どうして進まないのですか?何かありましたか?」隣で彼女を支えているボディーガードが尋ねた。

美奈は目を光らせ、表情を変え、唇の端に血に飢えた恐ろしい笑みを浮かべた。

彼女はエレベーターから出ず、由紀の前に現れて警戒させることもなく、直接そのボディーガードの耳元で小声でささやいた。「あの女を見たか?」

ボディーガードは彼女の指示を受け、由紀の方を見て、うなずいた。「お嬢様、見ました!」

「何人か人を集めて彼女を…」

「お嬢様、ここは病院です!」

「バカ、彼女が病院を出た後に手を出せばいい。それと、この女が病院に何をしに来たのか調べろ!」

「かしこまりました、お嬢様!」

美奈は由紀に悪意のある視線を向けた。「ふん、この生意気な田舎者が、私から陸兄さんを奪おうだなんて、夢見るがいい。男が好きなんだろう?いいわ、私が男を一ダース送ってあげるから、たっぷり楽しめばいいわ!」

由紀の足のしびれは取れ、立ち上がって虚ろな目で周囲を見回した。さっき渡辺美紀が去るときに、ここで待っているように言われたような気がする。

彼女はここに残って美紀の戻りを待つべきか、それとも…

「だめだ、こんなに時間が経っても、陸兄さんの状態がどうなっているのかわからない。自分で探しに行こう。そうだ、看護師さんに聞いてみよう。きっと記録があるはずだ!」

由紀は8センチのハイヒールを履いたまま、足を引きずりながら病院中のナースステーションを回ったが、誰も佐藤陸の情報を知らなかった。