第157章 いい子、怖がらないで

佐藤陸は一瞬固まり、両腕を広げて今田由紀を抱きしめた。「大丈夫だよ、宝物。怖くないよ。どうしたの?」

陸は由紀が悪夢を見ていたと思い、優しく声をかけて彼女を落ち着かせようとした。

しかし由紀は陸に触れられると、落ち着くどころかさらに激しく身をよじった。

「妻よ?お前は...俺は陸兄さんだよ。宝物、妻よ、俺に触らせてくれないの?なぜ嫌がるの?なぜ?もう陸兄さんを望んでないの?本当に俺を望んでないの?!」

陸は暗闇の中、その深い黒い瞳に濃厚な優しさを宿し、深情的に由紀を見つめた。

由紀は陸の声を聞くと、霧のようにぼんやりとした大きな目をまばたきさせ、赤く柔らかな唇を少し尖らせ、低い声で頭を振りながら叫んだ。「違うの、違うの...」

「違う?じゃあ陸兄さんに触らせないで、嫌だって言うのはどういう意味?陸兄さんを拒絶する意味じゃないの?!」

陸は彼女を抱きしめながら、優しく諭した。声を大きくする勇気はなかったが、それでも由紀は不思議と心が落ち着いた。

「お兄さん...」

「いい子だ〜怖くないよ、陸兄さんに教えて、俺のこと嫌い?」

「違う!」由紀は断固として頭を振り、唇の端が潤んで真珠のような光を放った。

陸はその柔らかく甘い「違う」という声を聞いて、喉が何度も大きく動いた。

腕の中の少女にはこういう魅力があり、彼の欲望を簡単に掻き立てることができた。

本当に愛しくも憎らしい存在だ。

「宝物、俺はお前が恋しかったんだ、わかる?この数日、お前は俺に冷たかった。感じなかった?俺はとても悲しい、ここがとても痛いんだ!」

陸は由紀の手を探り、彼の胸の位置に手を当て、悲しげな口調で言った。

由紀の柔らかな唇の端がわずかに上がり、顔を上げて陸を見た。

その夢見るような目で陸のハンサムな顔を見つめ、彼が恋しいと言い、この数日間彼女が与えた冷たさを感じ、今彼がとても辛いのだと聞いた。

由紀はまるで彼の言葉に魅了されたかのように、胸がとても柔らかくなった。

しばらく陸の顔を見つめた後、ゆっくりと目を動かして陸の胸元を見た。

「陸兄さん...」

由紀は酸っぱい鼻声で一言呼びかけた。その小さな声は甘くて柔らかく、まるで陸を溶かしてしまいそうだった。

「いい子〜宝物、俺はここにいるよ、ここにいるよ!」陸は引き続き彼女を魅了した。