第160章 陸兄さんとスーパーへ買い物に行く

佐藤陸が今田由紀のために自ら用意した朝食。由紀は洗面を済ませて階下に降りてきて、少し恥ずかしそうに頭を掻きながら言った。「陸兄さん、榎本のお母さんは？」

彼女は自分が本当に怠け者で、しかも料理の腕もあまり良くないことを認めていた。

陸兄さんと比べたら、彼女はずっと劣っていた。

でも、こうして安心して陸が作ってくれた朝食を楽しむのは、少し気が引けた。

「榎本のお母さんは、この数日家に急用があるから休みを与えたんだ。だからこの数日は僕たち二人きり。何か食べたいものがあったら言ってくれれば、陸兄さんが作ってあげるよ、いいかな？」

陸はいつものように彼女を甘やかすように言った。

由紀は陸が煮込んだお粥を一口飲んで、美味しさに目を輝かせた。「すごく美味しい！」

「ふふ...いい子だね、上手に言うね！でも君が喜んでくれれば陸兄さんは嬉しいよ！だって可愛い子は陸兄さんの大切な宝物だからね！」

由紀はそう言われて、頬が火照るほど熱くなった。

陸兄さんは本当に...

幸い榎本のお母さんは今いないから、また彼女をからかわれずに済む。

「今日は週末で仕事もないけど、可愛い子は何か予定ある？」陸は尋ねた。

「じゃあ、食事の後にスーパーに行かない？」由紀は突然提案した。まだ陸兄さんとスーパーに行ったことがなかったのだ！

昨晩陸をないがしろにしてしまったのに、陸は朝早くから愛情たっぷりの朝食を作ってくれた。

由紀はどれほど心の中で葛藤していても、もう陸を失望させたくなかった。

「スーパー？」

陸はこの提案がとても斬新だと感じた。彼は幼い頃から一度も自分でスーパーに買い物に行ったことがなかった。

「どうしたの？この数日榎本のお母さんがいないって言ったでしょ？今日は週末だからスーパーではきっとセールをやってるわ。必要なものを買って帰りましょう！陸兄さん、いい？」

由紀は優しく呼びかけた。その声は甘ったるく、まるで甘えているようで、さらには陸の耳元でささやくようだった。

陸はその声を聞いて、思わず体が強張り、喉が震えた。「もちろんいいよ。可愛い子がどこに行きたいと言っても、今日はそこに行こう。陸兄さんは全部可愛い子の言うことを聞くよ、いいかな？」

「うん！」

二人は朝食を済ませ、由紀は出かける直前に、自分の隣でハンサムすぎる陸を見下ろした。