今田由紀が目を開けた時、すでに翌日の午前10時を過ぎていた。
喉の渇きで目が覚めた彼女は、大きなベッドから起き上がり、見知らぬスイートルームを見渡すと、昨夜の嫌な記憶が一気に頭に押し寄せてきた。
「あ、あれ…ここは…」
どう見てもホテルの客室だった。昨夜逃げ出したのに、結局あの連中に捕まって連れ戻されたのだろうか?
しかし、自分の整った服装と無傷の体を確認する。
「おかしいわ。あの人たちに捕まったなら、きっと…そうだ、昨夜私は…見知らぬ男性に会ったんじゃ?!」
由紀はようやく思い出し、小さな頭を何度か振ってからベッドから降りた。
「誰かいますか?誰かいらっしゃいますか?」
由紀は何度か呼びかけたが、スイートルームには誰もいなかった。
頭の中は混乱していたが、今彼女の頭にあるのは急いで病院へ行って陸兄さんに会うことだけだった。
昨日誘拐されたことは、きっと偶然の出来事だと思っていた。
誰かが計画的に彼女を害しようとしていたなんて、まったく想像もしていなかった。
「昨夜はどうして怖くて気絶しちゃったんだろう?彼の名前も電話番号も聞かなかったし、どうやってお礼をすればいいのかしら?まあいいわ、陸兄さんを探さなきゃ。彼がいないなら、連絡先を残しておこう!」
由紀は心優しく、恩を忘れない性格だった。
彼女は部屋の引き出しから紙とペンを見つけ、自分の名前と連絡先を書き留めた。
「恩人様:私は今田由紀と申します。昨夜は危機に駆けつけて救ってくださり、ありがとうございました。今、とても急ぎの用事があるため失礼します。これが私の連絡先です。必ずきちんとお礼をさせてください。重ねて感謝申し上げます!」
由紀はメモを残し、ホテルを後にした。
佐藤大翔が朝食を買って戻り、由紀を起こそうとした時には、スイートルームに彼女の姿はもうなかった。
彼女が残したメモを見て、大翔は少し残念に思った。
彼は由紀の電話番号を保存し、メッセージを送った:「小さな子、俺は佐藤大翔だ!」
……
由紀はホテルを飛び出し、タクシーで直接病院へ向かい佐藤陸を探すつもりだった。
しかし彼女がホテルを出るやいなや、ホテルの外で待ち構えていた中村智也に捕まってしまった。
智也は赤い血のような瞳で彼女を睨みつけ、そのまま車に引きずり込んだ。
バン!