第031章 陸兄さんに朝ごはんを食べさせる

佐藤陸は手を完全に今田由紀の手の中に広げ、彼女が自分のことを心配して焦っている様子を見て、言葉にできない感情が胸に込み上げてきた。

「痛い、ちょっと無理かも……もういいよ、君はさっさと洗顔して食事して、お母さんに会いに行きなよ。僕のせいで遅れちゃだめだ。しばらくすれば良くなるはずだし、良くならなかったら医者に診てもらうから、早く行って僕のことは気にしないで！」

陸はそう言いながら由紀を外へ押し出そうとしたが、由紀はずっと彼の手から目を離さず、どうしても行こうとはしなかった。

彼女は逆に陸の手を握り、首を振って言った。「だめよ、あなたの体も大事なの。こんな風にあなたを放っておくわけにはいかないわ。一体どこが具合悪いの？私がマッサージしてあげてもだめなの？！」

陸は彼女が目を赤くして焦っているのを見て、冗談が少し行き過ぎたと思い、言った。「さっきちょっと手が痙攣しただけだよ、今はずっとマシになった。信じないなら見せるよ、ほら！」

彼は由紀の手から自分の手を抜き、いくつか動かしてみせた。由紀はそれを見て、驚いて口を大きく開けた。「本当に動くようになったの？！」

由紀は彼の手を握って左右から見つめ、陸は体を彼女の方に寄せて笑いながら言った。「安心して、大丈夫だよ。さっきはちょっと力が入らなかっただけさ！」

「今はずっと良くなった？！」

「うん、ずっと良くなったよ、大丈夫だ！」

「だめ、まず医者に連れて行かなきゃ。ちょっと待っててね、洗顔してくるから！」

陸がまだ何か言おうとしたとき、由紀は風のように浴室に駆け込んだ。由紀は急いで洗顔を済ませるとすぐに出てきた。

陸はすでにサングラスをかけており、そのサングラスの下の深い瞳が由紀の姿を見つめ、目には信じられないという表情が浮かんでいた。

彼女の洗顔の速さに驚いた。本当に自分のことを心配しているんだな。

「行きましょう、まずあなたを医者のところに連れて行って、医者の意見を聞きましょう！」

由紀は頑固に陸を医者のところへ連れて行こうとしたが、陸がそれを許すはずもなく、胃を押さえながら言った。「由紀、お腹すいたよ、できれば……」