第030章 陸兄さんに身を投げ出す

佐藤陸は今田由紀を抱きしめ、まるで子供を扱うように、自ら彼女に服を着せ、靴下を履かせた。由紀はとても素直で、陸が腕を上げるように言えば腕を上げ、足を伸ばすように言えば足を伸ばし、眠っていても従順でおとなしかった。

陸は新大陸を発見したかのように、とても嬉しそうに、彼女の頬に何度もキスをした。「奥さん、本当に素直で言うことを聞いてくれるね！」

服を着せ終わると、陸は抱えている体が重くなったことに気づき、見ると由紀が彼の肩に寄りかかり、すやすやと眠りそうになっていた。

「奥さん、起きて……」

由紀はぼんやりと頷いた。「ん？！」

「起きる時間だよ。顔を洗って何か食べて、それからお母さんに会いに行こう！」

彼は本当に由紀の睡眠を邪魔したくなかった。彼女がこんな風に自分に依存して、柔らかく寄りかかり、全身全霊で信頼している姿は、彼に大きな満足感を与えた。

しかし、このまま彼女を寝かせておけば、今田お母さんに会いに行けなくなる。由紀が目覚めた後、どれほど後悔するか分からない。

「お母さん」という言葉を聞いた途端、由紀は一気に目を覚まし、きちんと座り直して頭を振った。目の前にいる陸をはっきりと認識すると、焦りながら彼の手を掴んで尋ねた。「陸兄さん、私のお母さんはどこ？お母さんの状態はどう？もう会いに行けるの？！」

「寝坊さん、もちろん会えるよ。お母さんの状態は安定していて、もう一般病棟に移ったんだ。早く起きて顔を洗って、食事をして、一緒に会いに行こう！」

「本当？！お母さんに会えるの？本当なの？夢じゃないよね！陸兄さん、ありがとう。あなたのおかげで、あなたのおかげでお母さんを救えたの。ありがとう！」由紀は喜んで陸の胸に飛び込んだ。

陸は笑いながら両手で彼女の背中を撫で、狡猾な笑みを浮かべた。

ほら見ろ、彼の小さな妻はもう彼に抱きついてきているじゃないか！

感情が落ち着いた由紀は、自分が陸をベッドに押し倒し、彼の上に座っていることに気づき、一瞬固まった後、叫んだ。「あぁぁぁ、ごめんなさい、陸兄さん、わざとじゃないの。さっきはただ興奮しすぎて、わざとあなたの上に座ったわけじゃないの。痛くない？ごめんなさい、陸兄さん！」